何を今更「CSR」!- 先人に学べ日本人(近江商人)の知恵 -
株式会社 新 洲
代表取締役 永岡 栄
最近「コーポレート・ガバナンス」、「コンプライアンス」、「CSR」等々横文字文化を見聞きすることが何と多くなったことか。
何を今更という感じである。「企業の社会的責任(CSR)」は、決して新しい概念ではないのではないか。一年ほど前、一部上場の会社社長(元糸偏)の「近江商人とCSR」について書かれた記事を読んだ記憶がある。我が国の場合、古くは近江商人に代表される家訓を見れば理解に易しい。「三方よし=売り手に良し、買い手に良し、世間に良し」である。
滋賀県彦根出身のジャーナリスト田原総一朗さんの最近の横浜での記念講演記事にも、「自分と相手以外にも視野を広げる三方よしの精神こそ、混沌とした現在の世界情勢で日本が外向的にも経済的にも進むべき指針になる。」と話しておられる。
田原氏、早大を卒業しても尚近江商人が好きではなかったと聞いている。「近江何とかに、伊勢何とか。」余りよいイメージを持っていなかったそうである。十数年前までは。小生も父方は江戸時代より京都、兄弟で滋賀県生まれは小生だけ、今なお滋賀に住んでいるのも小生だけと言うこともあり、田原氏同様良いイメージを持っていなかった。
しかし、佐賀県出身の同志社大学教授の「近江商人の知恵を活かした経営学」であったかどうかは不確かであるが、そのような講演を十年程前に聴いて近江商人のイメージが一転したのである。
三方よし
「他国へ行商するも総て我事のみと思はず、 其の国一切の人を大切にして、私利を貧すること勿れ・・・・」 (五個荘 中村治兵衛家家訓 18世紀中、より興味ある方は五個荘のHPで)
どうだ欧米社会。我が国では18世紀半ば、 既に企業の社会的責任は一部商家で確立しているのである。
売り惜しみをしない、薄利多売、行きは近畿の名物名産、帰りは当地の産物と空荷のない輸送システムを編み出した近江商人・・・・等々。悲しいかな地元消費者に大いに受け入れられるが、地元同業者からは悪口、悪態をたたかれる結果となったようだ。いつの間にか叶わない存在、優れた存在を悪く言うのは世の常であり、「近江殿御、伊勢小正直」が罵言に転化したとも言われる。
近江商人の現在に通じる企業の社会的責任の背景には
・近江商人の多くが武家出身で高学歴
・高い識字率を誇った初等教育制度
・諸国産物廻し : 輸送コストの合理化
・物より信用を売る商売を信条に
・帳合法(会計システム)の制度化
・利益の社会還元(公共事業への多額の寄付等)
・節約と地元還元(けちではなく節約を信条とし、地元にも多額の寄付等大いに貢献)
・単身赴任、近江後家(関東後家)
・本宅妻の人事管理(後継者育成)
等々があげられるようだ。
伊藤忠、丸紅、ツカモト、トウメン等の商社や日本最初の百貨店白木屋(現東急百貨店)、高島屋、西武百貨店等商業は近江商人の代表格であり知る人も多いことであろう。大丸も関係が深いと聞いたことがある。以外や以外なのは、明治期全国に設立された為替会社八社のうち、五社に近江商人が関わっているらしい。第一国立銀行(現みずほ銀行)、横浜正金銀行(現東京三菱UFJ銀行)、住友銀行(現三井住友銀行)、京都商工銀行(現みずほ銀行)等々、帳合法(会計システムを制度化した何と近江商人らしいこと。近江商人と思えないところでは、日本生命に日本旅行、さらに二次産業ではヤンマー創設者に何とトヨタ自動車の初代社長と言ったところか。
さらに現在に通じる企業理念の元祖に、住友家の経営危機を救った広瀬宰平と伊庭貞剛の両名が。何と明治期に自社がはげ山とした山に木を植裁、緑を復元している。環境アセスメントなどほど遠い時代に環境配慮の元祖。地域住民の立場に立って、35年を掛け住友だけの利にあらず、国に利、社会に利をもたらすことを目指したとされる理念である。
今ひとつ、「勿体無し」から派生した「もったいない」精神の元祖は近江商人とも?。絵本の「もったいないばあさん」、小池前環境大臣の「もったいないふろしき」、「もったいない」を世界共通語にと訴えるノーベル平和賞を受賞したケニア副環境相のワンガリ・マータイさん。そのキャッチフレーズをどこかの知事戦でも利用していたような?
何と先人に学ぶことの多きこと。いつ失ってしまったのか先人の心。ISOにCSR・・・。日本流を見直せば「Japan As No 1 !」の再現も。以前は「派出所」が本名で「交番」が芸名であったが、ニューヨークが「KOBAN」を導入、治安が良くなったことから逆輸入、今日本でも「派出所」改め「KOBAN」となった。少し時代が早ければ「もったいない」「三方よし」も英語或いは共通語になった可能性があったものを。N・・・・nおしい!!!。
何だか浅い知識の「近江商人考」と言う感じになってしまいましたが、3月30日始めて出席した委員会で、委員長より罰として「何でも良いから投稿しろ」との命令に「投降」した不届き委員の執筆でした。
格調高い前回、前々回、・・・回の話題と異なり、(C)このような、(S)商人の、(R)ろくでもない、たわいない「CSR」の話になってしまいました。ここまで読んで頂いた方、お許しの程を。