「安倍政権の今後と日本の行方」
泉 和幸 氏
泉でございます。今日は標題についての所見を披露いたします。
さて、今朝の日経新聞の一面トップにアジア新興国の新興に13兆円、5年かけて本格的な協力をという記事が出ていましたね。その横に「AIIB」(アジアインフラ投資銀行)と言われる中国が中国のために中国によるアジア・インフラ強化のための資金援助というプログラムが対比されています。日本が代表するアジア開発銀行の「ADB」と明らかに対抗する動きですね。日本とアメリカはこの中国に主導権を握られるようなインフラの整備計画よりも、こうしたやり方が具体的にあるのだという日米合作の対応です。この新聞を読んでわくわくわくわく胸を躍らせた人と、「安倍首相は、何かまた大風呂敷を広げよったな」という見方をする人と二通りあると思いますが。アジアを舞台とする金融戦争の始まりであり、井伊掃部頭直弼が日米修好通商条約を結んだ決断と非常に似通ったところがあろうかと私は思います。つまり今まで日本は鎖国状態でしたが、これからグローバル時代における国際化の大きな波がひたひたとやってきたときに、日本の国の国内におけるインフラ整備を完了し、今後は、アジアにおける新興途上国のインフラ整備に我々の英知が質と量とを伴いながら、貢献するという〝開国の狼煙〟が上がったというかたちでこのニュースを読まなければいけないのではないかなと私は今日、朝、大変嬉しい目覚めを経験いたしました。
今日のテーマは「安倍丸」は果たして無難な航海をするのかどうか、今後の行方について見解を問うという皆さん方の注文でありますから、それに私は応えていかなければいけないと思います。
入れ歯接着剤を付けすぎましていささか唇が乾いておりますが、水を飲ませていただきたいと思います。接着剤というのはめったに使っちゃいけませんなぁ。今日、入れ歯が、三枝じゃありませんけど、大事な新婚さんいらっしゃいの真っ最中に入れ歯が飛んだという事件がありましたね、この間。「絶対に今日は失敗できんで」と思って接着剤を塗って来たんですよ。案の定、唇が乾きました。でももう大丈夫です。
今日の話は次のように展開するということをまずお考えいただきたいと思います。鎖国体制から新しいアジアに向かっていくときに従来の国内的な企業、並びに政府、その中間に立ちながらコーディネーションパワーを発揮してきた皆さん方はこれから新しいアジアワイドな形で日本の国内法をさらに国際的なルールに準拠しながら、政府が動いていくときにつかず離れず、むしろそれにぴったりと寄り添いながらアジア6億人の期待に応えるようなプレゼンスを展開していかなきゃいけないという開国の自覚、これを今日は私なりに皆さん方に訴えていきたいと思います。
従来型、国内的なインフラ整備に貢献する公共事業の潤沢な一つの調整作業を一転開花させて、意欲満々たる開発途上国は日本の英知に心から期待を寄せています。それは大資本が出てきてくれることに対する期待と同時に、その大企業の活動範囲がただ一過性の資金援助だけ、一過性の企業誘致ではなくて、どのように自分の国の法律に合致させながら企業のあり方を厳密に吟味していくかということを重視していくことになるでしょう。 皆さん方が今まで公共事業への倫理的にしっかりと王道を歩きがらやってこられた道筋というものをこれからアジアに伝達していく重要な役割がそこにあぶり出されてまいります。つまり、開国に対するノウハウはまだない、ないけどもいつ何なりと政府がそういう方向に向かって新興国の公共事業を本格的に効果のある効率的なものとしてするためには我々の力がもっとも必要である。表向きは企業に任すが、その企業進出の裏側の地道ではあるけれども足が地に着いたアジアの各国のインフラをどのように整備していくかということは、これは中国が売り出して参りました「AIIB」ではとても解決できるものではありません。現に日本とアメリカとはその「AIIB」の方向に対して、公平性と業務発注に伴うあるいは資金援助にともなう北京の思惑が濃厚に反映するようなシステムでは信頼できません。だから6月の末の協定書ができあがるまでは情勢を見ようというのが今の日米の判断でありますが、私は見事な判断であろうと思います。それまでに中国の「元」という通貨が本格的に評価が下がっていくという、「元」の暴落があるかもわからないし、中国の国内の様々な暴動、こういったものを内政上、習近平政権はどういうふうに乗り越えていくのかという不安も伴う中で、なぜか、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアが加わってきた、あの欧州の人たちが大挙して加わった「AIIB」だけど果たしてスタートをきることができるのだろうか。そのスタートをきっていくためには日本とアメリカとが大いに協力しなければできないはずであるけれども、しかしながら、その方向性に大いに疑念が残っている。一番大きな疑念は何か、「AIIB」の資金背景、資金構成の問題であります。つまり、その参加国の経済規模に応じた出資金を求めるというのがございますけれども、日本とアメリカの経済規模からみて、中国は一番に横綱か大関を期待するぐらいな大きな期待があります。その両者が入らないことによってヨーロッパの期待に応えるようなこの「AIIB」の本部はどういう資金背景の配分を考えていくのだろうか。やはり本格的にこの5月から6月にかけまして日本の参加を習 近平国家主席は振り上げた拳を上手に降ろしながら何とか近づいてくるだろう。そしてそれにはロシアが日本にも何とかこの中国とロシアが中心となっている「AIIB」に歩み寄ってもらいたいという外交上のアクションをおこすに違いないというのが私の一つの仮説であります。
その前触れかもしれませんけれども、プーチン大統領の側近といわれる秘書がやって参りました。日本で北方四島問題がありますが、この動きは明らかにロシアが欧州のG8からG7に追い出されたウクライナ問題の打撃を中国の買い付け協力(天然ガス)に大いに期待を寄せながら、何とか日本とも関係修復をとのプーチン大統領の思惑がいよいよ露骨になってきた一つの証拠であろうと思います。ちょうどベーリング海が雪解けになりまして、あの北海開発にともなう様々なエネルギー資源は太平洋に向かってベーリング海から一気に出てこようとする重大な2015年のこの変化。そこでプーチン大統領の考えております世界戦略は太平洋に深い鍵を持ってきたのは当然のことであり、戦後70年、まだ平和条約を結んでいない日本との間に何としても結ばなきゃいけないという動機は日本よりもロシアのほうが高いはずでありますが、それをあたかも後ろのほうで大して期待をしていないような顔をしていながら近づいてくるこのロシアの対日外交、これは非常におもしろい。
そのおもしろさの裏側にはもっとおもしろいことがあります。ロシアは中国と一枚岩のような格好をしておりますが、ロシアの持っております大きな危惧。それは何かといいますと、習 近平国家主席が打ち出してきました新シルクロード構想に伴う、陸のシルクロードと海のシルクロード。この両者をやられることは海はともかくとして、陸はユーラシア大陸における同盟、ユーラシア同盟というのを打ち出して参りましたプーチン大統領としてみれば、何のことはない習 近平国家主席の新しいシルクロード構想は確実にカザフスタンからトルクメニスタンに至り、さらにはカスピ海を越してグルジアにまで影響するような考え方に無条件に同調するわけにはいかない、特にサウジアラビアを始めとする多くの中東の問題に大きな問題を抱えておりますロシアとしましてはカザフスタンという最大の旧衛星国を何としても自分の埒外(らちがい)に置かずに懐の中に抱きかかえておきたいとこう思っておりますから、習 近平国家主席のシルクロード構想というものを実現するための「AIIB」に無条件に乗っかって行くわけにはいかないのがプーチン大統領の本音であろうと思います。
言うならば、プーチン大統領はグルジア問題、今はジョージアという名前に変えておりますが、「ISIS」(イスラム国)といわれるあの過激派が非常な勢いでチェチェン共和国を軸として北上をしようとしてみたり、あるいは南のほうのイエーメンをイランが刺激してサウジアラビアが窮地にたっているという状態の中で、エジプトとロシアとが提携しながらそのスンニ派の牙城といわれるサウジアラビアを今揺さぶっているというような動きは注目ですがこうした広角的な変動を冷めた目でプーチン大統領は持ち前の戦略を練っているとみるのが正当な見方ではないかと思います。
アメリカはアメリカで日本がロシアとの間で2プラス2、つまり外務大臣と防衛大臣が毎月1回会談をするいう、日露2プラス2ができあがった中において、日米安保条約の日米2プラス2が弱まってもらっちゃ困る。何としてもこれを強化しなきゃいかん。それには日本が必要以上にロシアに接近して貰っちゃ困るから、代わりにオーストラリアとインド、この二つを引き合いに出しながら、日米豪、日米印。この二つの三角形を本格化してアジア安保体制を万全にとのアメリカの対日戦略の大きな軸でしょう。そしてその二つの2プラス2をさらに広げるためにはイギリスともフランスとも話を付けまして、日仏、日英、2プラス2が出来上がったことは皆さんほとんどご存じないと思いますが、そういうヨーロッパとの間にも「EPA」(経済連携協定)という包括的な貿易交渉の軸足を作りました日本は、過去の70年とは違った日米の間隔だけにおける二国間関係ではなくて、ヨーロッパを含めた、あるいは対欧州から豪州、インドを軸にしながら日本がこれから発達すべき国際的貢献の中身を裏付けていこうとする大いなる安保がらみの経済ネットワークづくりです。
難しい問題がたくさんあればあるほど、優先順位は必ず自ら決めなきゃいけない。これは一乗寺下り松の決闘における宮本武蔵が吉岡門弟が何千人おろうと本当の敵は目の前にいるだけだと言ったあの「五輪の書」の中に込めらる戦いの極意です。目の前の課題、それを一つ一つクリアすることが基本なんだという考え方を今、安倍首相は宮本武蔵と親戚だとは思いませんけども・・・(笑)。
彼はおそらく二階俊博総務会長が三千人から四千人の人間を連れて「旅行こそ日中関係の流れだ」として動こうとしている時に、にんまり笑いながら、それに対して、まぁあの方はご自由におやりになったら結構だというふうに言っております。二階総務会長は二階総務会長で、我々のこの動きが日本の政府の大きな変化につながれば結構ですと中国の要人に昨日しゃべっておりましたね。この会見の次に予定されている二階さんの心の中に動くものと、これを無関係だという顔をしながらその次に現れて参ります中国の態度というものをしたたかに計算している安倍首相の含み笑い。この裏側には共通した日中関係打開への一つの糸口を私たちは嗅ぎつけることができるような気がいたします。
ところが残念なことに日本人の心の中には、「もう中国は嫌いだ、ロシアも嫌い。韓国はもっと嫌いや」というふうなナショナリズムに基づいた国家観がありますがこれらを白紙に戻したい。 アメリカのケリー国務長官が韓国に出かけ、「いつまでも日韓が対立せんようにしてくんなはれや」と言いましたよね。これはどうみたって、アメリカは日豪、米豪、米印に米韓の安定のもとアジア戦略を成り立たせたいという狙いがあることは明々白々であります。そういうケリー国務長官の発言をバックにアメリカの国防総省が打ち出してきたのが、フィリピンの沿岸警備隊と一体化しながら、あの中国が南沙諸島でやっている国際法を無視し新しい造成を展開している〝砂の長城〟を米空軍は本格的にチェックするということで一両日前からアメリカの空軍が上空からきめ細やかな内容を世界に発信するという体制にとって出ました。おそらく最近のヒラリー・クリントン前国務長官が言いましたように、公海上の安全を脅かすことだと言った言葉の上だけのクレームではなく、アメリカの海軍の対潜水艦探索の最先端をいっています空軍力を使って、具体的な行動を起こしたニュースはこれは異常といっていい緊張感を生み出しています。アメリカは日米関係を非常に重視しながら尖閣諸島をはじめとして日本の安全保障には本格的にタイアップするよということを意思表示をしながら、だからといって中国と事を構えるわけではない。〝抑止〟です。米西戦争以来の大事なアジア拠点のフィリピンの危機感やベトナムの危機感など、東南アジアの危機感を打開してこそアメリカの経済はこれから本格的にアセアン諸国から支持されるか、されないかという重大な境目です。また「AIIB」に日本がアメリカと離れて単独で加入せず、あくまでも日米は一体となって「AIIB」の去就を見さだめようではないかという意思表示が見てとれます。
硬軟自在アメリカは今、かつての同盟国フィリピンとの新しい関係を構築しようとしています。
そして日本に対しては鉄道ビジネス、ロボットビジネスなどを通じアジアに対する新しい交友関係を求め、これに応じて日本のアジア戦略に弾みがつきます。
まず、本格的に新幹線をタイに輸出。タイのチェンマイからバンコクに至る新しい新幹線輸出というのは戦後70年間、日本が初めて本格的に取り組んでいく鉄道ビジネスの開拓であり、並行してアメリカの沿岸警備隊と匹敵するようなかたちで日本の海上保安庁がフィリピンのコーストガードと連携した日比協力のスタートです。東南アジアにおいての最大の注目点である、南沙諸島の対応に日本の本格的な参加です。
こうしたアジア情勢 に対し大きな障害があります。多国籍国防の重要な方向、単なる自分の国だけを守っておきさえすればそれでいいと考えている戦後70年間の価値観を一転しまして、安倍内閣は集団的自衛権に対する本格的な体制をつくろうとしています。しかしそれをアメリカの戦争に日本人を巻き込んでいくと右翼的な行動であるというふうに非難をされることを覚悟で踏み切った閣議の決定でありましたけれども、中身は今言ったようにフィリピンとオーストラリアと日本との間の新しいアジアに対する安保の枠組みを評価しようとするところに凝縮してまいります。
つまり集団的自衛権というのは日本の国へ中東から輸送してまいります様々な商品がまずはホルムズ海峡、もう一つは「紅海」を軸としたあのスエズ運河からの欧州の生産物品、これがアデン湾を通じてインド洋を通り、マラッカ海峡を通って日本への輸送路、これはシーレーンと言われますが、このシーレーンに対する妨害としては恐るべき中国の海洋戦略がある。これをしっかり認識しながら、日本とベトナムとフィリピンとが三者合同のかたちで作業する上でまずは集団的自衛権に伴う海上自衛隊、及び海上保安庁この両者の動きをしたたかに合法的なものにしなければならない。この問題がそこであぶり出され、一週間くらい前から首脳会談をはじめ、各党首会談が次々と展開されているのでありますけれども果たしてどう展開されるか。
上院下院の講演の場において、安倍首相は「夏までには皆さん方ご期待のアジア全域における日本の最も重要なふるまいを裏付ける決定をいたします」と確約しましたね。「日本の国会の承認を得ないで首相が勝手なことを言った」と各党は怒り狂っておるわけでありますが、それに対して安倍首相はどう対応していくか、グローバルな時代の国際化の中における日本の政治が(日米のアメリカのポチというかたちではないかたちで)アジア全体に貢献の道筋をどう証明するかという点で非常に重要な5月、6月であろうと私はみております。
昨日のテレビを見ておりましたら、おもしろい放送がありました。石原裕次郎が「黒部の太陽」という映画を作るとき、〝五社協定〟というのがあったんですね。松竹や東宝、新東宝、日活が集まって、自分に所属しているスター達は絶対参加出演させないといって立ちはだかったんですね。その壁に対して石原裕次郎はそこまで言うんだったら一本釣りだと三船敏郎を口説きます。三船と石原とが提携しながら敢えて〝五社協定〟にむかって敢然と反旗を翻したあの「黒部の太陽」の制作意欲に辰巳柳太郎が、よろしい私も加わりましょうと新国劇から参加、前身座、新劇、新派そういったものがぞくぞくと協力しながら「黒部の太陽」はあの壮大な観客動員力を持った作品となって実った。
この話を見ながらふと思います。自民党、民主党、そして公明党、社民党、共産党。五つの政党が真っ向から逆らいながら、「大阪都構想、とんでもない。こんなサービスの低下、許されん」と五社協定に匹敵するような五党連合型の橋下 徹大阪維新の会代表に戦いを挑んだのはつい最近の5月17日でございました。この反撃に橋下 徹代表、打ちひしがれて俯くのかと思ったら、にこやかなかたちでさわやかに、「私はもう政治家を引退します。私の歴史に政治はありません」という台詞を残して、「ワンポイント・リリーフなら」と余韻を残しました。住民投票の行方に対し、彼は想定した範囲内で〝旧大阪〟を守ろうとする保守的な人達の結果だったのでしょう。勝敗それぞれの想定内に組んでおった一つの結果ではないか。それに対応する準備は十二分にできている。安倍晋三首相と橋下 徹代表とのハルカスという新しい高層ビルの屋上において締結した話がいよいよ本格的にスタートをきると読んだのは私1人ではなかったように思います。 「橋下さんを追い出してほんとに情けない」との電話があり、橋下 徹代表が落ちた、残念だった、都構想はもう駄目なのか。でも橋本さん大阪市長は辞めないで・・・。などすごい反響でした。都構想に対する大阪人の持っています現代の意識というのが、ちょうど幕末における開国か攘夷かの議論と二重写しでしてね、まずは長州征伐を前提とするような一つの大きな変化があったけどもその後幕府そのものの勢力の劣化、体制的な後退というものを一気に薩摩と長州とが一体となりながら突き崩していった。あの歴史的な教訓を背景としながら橋下 徹代表はいよいよもってこの都構想で実験成果に対する日本の保守的な五党連結型の政治のあり方に真っ向から勝負を挑むという対決の腹を固めた。同時に、集団的自衛権に対する本格的反発に対して、安倍首相と維新の会の「黒部の太陽」なみのビッグ路線にいよいよ踏み出していくという歴史的な課題に一歩踏み込んだように思わざるを得ません。
ということは安倍首相は腹の中で橋下 徹代表を自分の第三次内閣における重要な一員として起用する腹があるんじゃないかとの仮説も出てきます。じゃあ橋本は何やるんだ、石破 茂と並んで日本の道州制の問題、あるいは憲法改正の問題、様々な問題を控えているけれども、「ワンポイントリリーフですよ」と言ったあの言葉には、公明党が今の考え方はそのまま存続されるならば何としても自民党として新しい三分の二を獲得するための参議院選挙、そして次の衆議院選挙、これを視野に入れながらどういう政治集団と組んでいくかという日本の国内の政治のがらがらぽんが急浮上します。
この踏み切りと同時にアジア各国から要求が大きな需要が具体化し、その需要に応えていくために、日本の世界一流能力をどうやってJICA(国際協力機構)を始めとする、いわゆる「ADB」(アジア開発銀行)を通じ、アジア海域の新しい支援・協力のベクトルを天下に示す。アジアの国々が日本を本当に応援しているアジア的なサポート、アジアからの期待、これをバックにしながら国内における様々な反安倍政権の勢力に対して対抗しようという動きを示すのかと思っていましたら、今朝の日経新聞のニュースでした。むざむざと中国主導型の「AIIB」はすんなりといけないよ、ひょっとしたら空中分解をするだろうなどという期待を含めながら日本は6月30日までの協定書の内容について静かに嫌み半分で見つめて行くという姿勢を見せたのは今日のニュースでありました。
このニュースを見ながら中国の習 近平国家主席はどう悟ったでしょう。やっぱり国内的な矛盾を乗り越えながら、腐敗追放に全力を挙げてきたけども、腐敗追放をやることはさることながら日本と中国とがアメリカの機嫌を損なわないかたちでどう取り組んで行けるかということはインドネシアやシンガポール、マレーシア、インド、ミャンマー、ベトナムといった国々との間でこれから本格的な裏舞台外交でやってくるにちがいないというふうに私は仮説をたてております。
いうならば、習 近平国家主席の対日メッセージが少しトーンダウンするのではないかということが一つですね。もう一つは依然として頑張っている韓国の朴 槿恵大統領、この大統領のあの強硬な態度は国内におけます自分の支持率が20パーセントを割るような危機的な状況にあってもなお言わなきゃおれないでいるあの悲壮な決意をですね、アメリカは仲立ちをしながら、「1910年あの日韓併合をやってしまった日本のやり方に対して今年の夏の安倍首相の70年談話がどう出るかちゃんと期待しなさい。アメリカもちゃんと釘をさしておきますから。朴大統領、ここで一つ、日韓関係を上手に調整するための準備をしたらどうですか」と米韓日の連携重視を訴えています。私はこれで朴大統領がどんな態度になるか大変注目しております。
あのセウォル号が沈没したときに日本の沈没船に対する海難救援のノウハウがあったならばと密かに側近にもらしたという話をもっております。あの朴大統領、お父さんからもずいぶん聞いている日本と韓国とが本当に手を合わせることがアングロサクソンのアジア戦略に対する重要な鍵だと聞いているはずのあの朴 槿惠大統領が今、大変な悩みを持ちながら、彼女はこれからどう出てくるか、この二つが大きな課題であります。
中国の習 近平国家主席のほうははるかに大きなインパクトを持っておりますから、今日の話は中国は今後どういうふうに変わってくるのかということに対する、また変わらなければ中国は生き残れないのかということを問題にしながらそれにはロシアがどうするかというのを点検する仮説をもう一つ検証していきたいなとこういうふうに思います。
お手元には習近平国家主席が持っております腐敗追放と様々なかたちの権力集中の人脈を書いておきました。この人脈は今から4ヶ月前の人脈でありますからなおこれから大いに変わって参ります。特に胡 春華広東省委員会書記という人物がこれから登場してくることは十二分に考えられ
ます
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昨日のニュースでしたね、胡 春華が二階俊博総務会長と会ってましたね。これは大きなニュースなんですよ。胡 春華というのは前の胡 錦濤政権が「私の後は李 克強に頼みますよ。私はあなたに政権を譲るけれども、習 近平さん、私の後は李 克強だと思っていたことを忘れないでくださいね。でもあなたが国家主席になっていることは上海閥の江 沢民さんがバックアップすることが大きかったから私は一歩譲りましょう。しかしあなたの次は、この胡 春華を・・・」と言ったことをほとんどの人が記憶にとどめておりません。
胡 春華は広東地方のほうの省庁におりますけれども、習 近平国家主席の側近たちとしましてはこれを今のうちに潰さないといかんということで、ずいぶんと汪 洋という李 克強の横に付いております副首相がおりますが、これもいずれも「共青団」と言われる胡 錦濤の副官たちでありますからこの汪 洋を抑え、汪 洋を抑えることによって胡 春華の芽を潰そうという動きをこの2、3年前から克明に展開していますけれども、なるほど胡 錦濤時代の中国の新しい時代を夢見ようとするリベラルな人たちにとって胡 春華は大事なプリンスでありました。今度の二階総務会長の大量の旅行客の日中協定を結ぼうとしている動きに対して真っ先に出てきたのは胡 春華でありました。 逆にみておけば胡 春華をこのプログラムで失敗させれば彼の政治生命を断つことができるという思惑も片方に控えていることでしょう。さてどう展開するか。目が離せません。
今後の日中間の和解を進めて行くためには、かねて胡 耀邦が考えておりました日中が提携しアングロサクソンの敵意を招き混まないでやっていく重要な道だという考え方がこの胡 春華を通じて生まれてくる可能性がある。習 近平国家主席の腹の中にはどうのこうのいうけれども一党支配の、いわゆる共産党の一党支配の正当性を世界に認めさせることができるならば次の自分の後は胡 春華に任してもいいという意思表示に繋がってくる可能性がはっきりと示されるかどうかですね。
おそらく今の習 近平政権の中には胡 春華詣でをする連中がどんどんと増えていくと思いますが、そういう動きの中で注目しなければならないのは王 岐山党中央常務委員であります。王 岐山というのは若い頃から習 近平国家主席と文革以来の大変な仲良しでありまして、政権にとって一番危険なのはアメリカじゃない、ロシアでもない。国内にいるハエや虎や海外逃避のキツネたちだよと、小蠅叩きと虎狩りを始動しながら海外のキツネ狩りまでやって、海外に資産を投資させている富裕層たち、この連中を次々と呼び戻し、その不当なる蓄財の実態を暴き立て「習 近平国家主席は、とことんまで人民のため彼らを見逃さないよ」と脅しあげているのが今の習 近平政権の権力集中のドラマの最大の課題であります。これをやりすぎるとついこの間、王 岐山がホテルに行ったときに、突然の停電があり三発の銃声が響き渡ったという事件がございましたとか。それに留まらず、習 近平国家主席に対する暗殺の動きがいろんなところで発生したなどという情報が、しきりに流されるようになってきました。これなんかはまさに心理戦と情報戦という中国特有の対外戦略を国内的にも適用した大きな動きであろうと思います。
日本の夕刊フジという新聞社がありますが、夕刊フジはこれを一面トップに取り上げまして、「習 近平暗殺の動き」と報じましたね。その後ちっとも後追いがありませんが、こういうことでは私の古巣であります産経新聞の優秀な優等生であります夕刊フジでやることとしては、私は産経の次の確証報道を期待しております。しかしこれを夕刊フジだけが取り上げたということの意味合いは、習 近平政権が抱え込んでいるやりすぎ、既得権益保持者に対するやりすぎだというような意見が中国の国内でかなり濃厚にでてきている。それは「IS」(イスラム国)によって証明されるようなイスラムの過激派が今シリアとイラクだけで動いているけれどもこれが東に向かってウズベキスタン、タジキスタン、あるいはカザフスタンといったようなイスラム国家を経由しながら新疆ウイグル自治区に渡ってきた場合、どのような事態が起きるかってことを大変注目する面々は、ここでやりすぎないようにという現政権の失脚への行動を起こそうとしていることもまた次なる中国問題を考えていくうえに私たちは無視できない設定であると思います。
敢えて申し上げれば、この8月から9月にかけて習 近平政権の大きな政権維持が可能になるかどうかということに匹敵するような騒動が持ち上がる可能性、それは中心となるのは軍部であろうと思います。人民軍のもっております日本の商社のような利益収奪行動というのは従来の官僚を中心とした汚職行動だけでなく、人民軍をバックとしたアフリカ、中東、これを軸とする様々なエネルギー資源の組織を巡る不当なる石油閥の大きな動きがございます。周 永康という石油閥のドンとからむ、徐 才厚と郭 伯雄(共に元党中央軍事委員会副主席)、この軍部におけるナンバー2を2人とも処断をいたしました習 近平国家主席に対して、脛に傷もつ軍部の主導者達は事あらば、習 近平国家主席の外遊、外国に向かって出かけていったりする留守中にクーデターを起こすという可能性も十二分に考えられます。まさに大きな中国が抱え込んでいる問題であると思いますが、それ加えて習 近平国家主席が悩んでいるのは、中米と南米はつまりアメリカの奥座敷を揺るがす国家戦略の将来展望が揺らぎ始めている事態です。
ブリックス(BRICS)というロシアとインドと中国とブラジルという4つの国が集まった南アフリカを加えた雄大な世界経済対策組織の動きですね。この組織を中核にしながら上海シックスという経済同盟のネットワークをからませ、さらに「AIIB」へと発展させていくというこの習 近平構想の中では中米と南米が決して離すことのできない大きな問題でありました。ために習 近平国家主席は南米に中米にと外遊を重ねておりましたけども、安倍晋三首相も"地球儀外交"みたいなかたちで習近平国家主席のそうした思いを察してかのような、小泉純一郎元首相の実績を超える積極外交を重ねました。
あの地球儀外交の背景には中国が慌てふためいている一つの主題としてニカラグアという国が浮かんできます。ニカラグアとは何か、これはパナマ運河がありますね。中米の南の端、パナマ運河は現在北朝鮮を中心とした太平洋に向けて出てきています中米の貿易の通路でありますが、それにアメリカは点検能力を徹底いたしましてあらゆる積み荷を調べることになりました。となると積み荷の中の一番大きな内容は、キューバやカリブ海諸国から提供される、北朝鮮並びに中国に対する太平洋をまたぐ協力関係にアメリカがナーバスな対応に着手という動きです。言うならば中国の海軍としましては海洋覇権を拡大すると同時に、このキューバにも常駐するミサイル駆逐艦、これを三隻常駐させるという強烈な軍事的プロジェクトがございました。この、かつてフルシチョフの時代にカストロがやりました、フロリダ半島までの非常に短距離の状況の中にあって「アメリカの心胆を寒からしめるミサイル攻撃をいつなりとも我々はできるのだ」といきまき、フルシチョフの狙いに当時のケネディーが「キューバ危機」と悩み抜いた事件がありました。
そのキューバ事件をあたかも思い出させるように、「もう死に体であと1年の命やで」と言われているオバマ大統領が、世界をアッと言わせる寝技を演じました。
キューバと50年ぶりに国交回復をとの中国への逆パンチでした。ついまだ数ヶ月前の問題ですよね。キューバとアメリカとが仲直りしたことによってニカラグアで新しい運河を造り、パナマ運河に替わる新しいニカラグア港からカリブ海に出るという中米をくぐり抜ける大ビジョン。このセラック対策というのはカリブ海の共同体が本格的に南アメリカと一体となって、アングロサクソンの息のかかった国家とはいっさい取引をしないということを大義名分として打ち出した「CELAC」(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)という運命共同体です。また中国はこの新機軸に大きくウエイトをかけておった、たくさんのお金をかけてニカラグア運河の開拓に最大のお金をかけて突き進んできたんですね。ところがこの米・キューバの国交回復によって習 近平国家主席の海外資産投下のインフラ投資がいかに先読みが十分でないか、アメリカ外交上の失敗だったのではないか。いま、中国の国内では「ニカラグア問題における習 近平国家主席の立場が非常に揺らいでいる」ことをほとんどの新聞はまだ書いていない。言うならば単にニカラグアだけに留まらず、習 近平国家主席の対外戦略というものが必要以上に拡大生産しすぎてその結果あらぬ敵を招いた。その一番いい例がこのフィリピン沖合におけるミスチーフ礁のみならず、あのサンゴ礁をつなぎ合わせる新しい基地構築といういわゆる海洋覇権の拡大の動きである。アメリカは静かに見守っていたような顔をしながらついに行動を起こし始めた。防空識別圏におけるときにもあれほど反対しなかったアメリカが今度は軍事行動として原子力潜水艦が海底深く待機し、そしてこの上方を通過するタンカーに対して戦略的な攻撃をかけていく重要なる軍事拠点にしようとしていることを許さないと言わんばかりにアメリカは本格的に動き始めました。マラッカ海峡をにらむ戦略行動、この次にくるものは何か。
アメリカがかつて日本に対してABCD包囲陣を持ちながら当時の国務長官が確実に日本に対して不可能なような要求を突き付けてきた、あの要求と同じように徐々に中国の持っております海洋覇権構築への動きに積極的な反応を示そうとする気配を中国の敏感なリーダーたちは感じ取っているはずであります。言うならばそれを感じ取らずに、ハル・ノート、思い出してくださいよ。日本の東条内閣がハル・ノートを日本の生命線を侵すものであると言って意気高揚しながら蹴っ飛ばした。それによって始まった昭和16年12月8日、これは明らかにアメリカの待ち受けていたプログラム、これに対する読みがほとんど顧みられなかった、大きな失敗であったと私はそう思いますが。そういうハル・ノートに匹敵するようなこのフィリピンの沖合におる中国海軍の海洋覇権の自己矛盾、これをアメリカは絶対許さないよということをアセアン諸国に対する恩を売るかたちで今スタートをきっているということをみながら、このニュースだけは毎日厳重にチェックしていく必要があるのではないかと私はそういうふうに思います。
なぜそんなことを重視するかといえば、中国はウクライナから「カジノの船にしよう」と持て余しておりました、古い旧式の航空母艦、ヴァリャーグを中国がこの航空母艦が必要だと言って買い取りました。修理を加え「遼寧」という名前を付けまして上海を中心とする連合艦隊の旗艦にいたしました。そして大連を中心とする北方艦隊、それから上海を中心とする中央艦隊、それから海南島を中心とする南方艦隊。この南方艦隊が大きな曲者でありますが、中国海軍の中でもっとも先鋭的な中国の海洋覇権を拡大しようというリーダーが結集している集団でありますが、この海南島をそっくり原子力潜水艦の集団的な基地として展開しようとする動きを持っておりまして、アメリカの国防総省も海南島の中国海軍の動きをずっとチェックしていました。
言うならば沖縄を飛び立ちましたいわゆる偵察機が必要以上に海南島に近づいて中国の戦闘機とぶつかったという話を思い出していただきたいんでありますが。あの頃から海南島がアメリカの対アセアン政策を根底から覆して中国主導型のアセアン経済圏を確立しようとする意図のもと話題の埋め立て〝砂の長城〟づくりへとつながりました。
いま中国は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)を始めとしてASEAN+6、あるいはAEC(アセアン経済共同体)でアメリカのTPPに対抗しようとしています。これは鳩山由紀夫さんが大好きな東アジア共同体でした。「沖縄の基地はもう県外から国外へ」と言ってしまった背景にはこの「AEC」、アセアン経済共同体というものが大きく作用していますが。この計画を実現するためには何としてもあの南シナ海における海洋覇権を確立しておかなければすべてが貫徹しません。もっともそれに協力するのはインドネシアでありました。インドネシアと中国はその中核としてラオス、カンボジア、これをバックアップしながらアセアン諸国の協力は10カ国のうち、ミャンマーはどうも同調しかねていますが、さらにタイも駄目だ。形勢は5対5のような対立関係を通り越えながら、中国は一気に実力行使に出たのが、今度のフィリピン政府との真っ向からの対決。そしてベトナム政権との間の真っ向からの対立を踏みきった大きな背景にあります。
そしてその狙いの次にはマレーシアのマハティールという昔のリーダーがおりますが、マハティールと提携しながらアングロサクソンが描いているアジアの主導権を回復し、日本の軍隊によって次から次へとあの有力なる植民地が独立してしまった。あの1945年ですね、それからの70年間の失地を回復しようとするイギリス。このイギリスに巧妙なアプローチを展開しながら我々はイギリスの経済的な発展に協力するんだと言いながら、この習 近平政権はシンガポールに様々なアプローチを展開しました。
リー・クアンユー(初代首相)という人がこの間亡くなりましたが、このリー・クアンユーはこれに対し、これは中国の思い上がりだ、アングロサクソンはそうは簡単にこのアジアにおける利権を放棄するものではない。中国にも新しいかたちの手を差し伸べながら香港の返還を通じながらかつての7つの海を支配した英連邦がもう一度新しいかたちのアジアにおける仲間入りをさせてもらうことが必要だとしきりにシンガポールから打ち込んだ策は今から3年前でありました。
その3年前にシンガポールを軸としたイギリスの旧英連邦復活への動きはどういうかたちで表れたか。オバマ政権がチリ、ブルネイ、ニュージーランド、シンガポール、4つの国の提案に対してOKを出したあの裏に英連邦ありと気づきました。「TPP」(環太平洋戦略的経済連携協定)、という名前で私たちは接触することができました。「TPP」はアメリカが打ち出してきたアジアにおける本格的な経済ネットワークであり中国を封じ込めるものであるとみんな思いました。
ところがその常識はよくよく眺めていきますとオーストラリア、カナダ、インド、ミャンマーさらにはシンガポール、マレーシア。全てかつての英連邦の一角の人々が集まって動いているという動きがようやくにして分かってまいります。いうならばイギリスが描いている大きな狙いであり、アメリカと分担して表芸をアメリカの役で裏芸はイギリスが引き受けるということになっておったということがどうやらはっきりしてまいりました。そこにもってきて「AIIB」にニュージーランドが「これはええ話や、オーストラリアさんわしはこれに入るで」と言って真っ先に声を挙げましたね。これは「TPP」の起ち上げのときもそうでした。シンガポールとニュージーランドが声を挙げました。今度はシンガポールはだまっていますがこのニュージーランドが声を挙げた。さらにイギリスはヨーロッパのみなさん、この中国の動きはわしらが入ることによって世界的なルールを実現させる重要なるきっかけになりますよ。中国の独走を押さえましょう。そういうことでしょう。スコットランドの反撃を抱えておりますあのキャメロン首相は総選挙を控えてこの策に出た。フランスのオランド大統領もドイツのメルケル首相と一緒になりまして英仏独伊。それに周辺のルクセンブルグまでOK、スイスまでOKというかたちで参加したのが真相でしょう。
日本とアメリカは当面参画しないけれども「バスに乗り遅れてしまう」という声がしきりに出たことも皆さんご存じだと思います。そのバスに乗らないから戦略的に何も変わらず、これに乗らなきゃいけないという世論は一体どこから来るんだろう。これはヨーロッパからきているかどうかわかりませんけれども。私は日中の新しい取り組みの一つの条件作りではないかと思います。
日本が「AIIB」に入ってくれるならば我が国の反日キャンペーンは止めましょうというようなかたちの環境問題、あるいは水の問題、ロボットの問題、あるいはドローンの問題など様々な問題をひっくるめて中国は日本にこの「AIIB」参加が本当に日本には必要なんですよ、アジアの国々もそれを期待しているんですよ、という情報戦をしかけてきているというふうに私は考えているんです。
「何、それはおまえ言い過ぎやでと、もうちょっと仲良くしようと言ってんだからこの際相手の仲良くしようというメッセージをしっかり受け止めてやらなきゃいかんのと違うか。」これぐらいお人好しの議論はないと言って私は今、常にその議論で今仲間とぶつかり合っている最中であります。
先ほどもちょっとこの講演が始まります前に、「先生は前は何だったんですか?」「私は産経の記者のなれの果てですがな」って言ったら「産経新聞って立派な会社ですね。貴方みたいな人を長々と抱え込んでいるなんてすごい会社ですね。」いやはや評論家はむずかしい。
私は、記者としては異端児ですね。従来の常識とは違った異端児的な発想が求められているという点においては橋下 徹代表もまさに異端児であったと思います。そういう異端児が高杉晋作、あるいは井上聞多、森 有礼、あるいは岩崎弥太郎、渋沢栄一といったような人々が登場することによって日本の文明開化の一歩が築かれたように、これからはそういう従来型の延長線上ではない国家の経済的な鎖国政策の中で安住してきた集団が新しく、何となく傍目にいろんな風が吹いてくるけれども、この開国という強烈な環境変化を乗り切るため心の準備をしなければならない。
まずは協会会員全員が英語における、英語などバイリンガルな優秀な会社に切り替えていかなきゃならん。マレー語ができる人間はいるか。あるいはタガログ語がどうだ。あるいは韓国語はどうだ、中国語はどうだ、そしてすべてを結託する英語はどうだということを点検した場合。自分の身辺を点検した場合、下手な開国に応じたらこのバスの上では仕事にならんではないか。変わることをしないで変わらないことを前提とした保守的な考えの中でこの協会が終始するならば、この協会は日本の、言うならば、壮大な開国政策において桑名藩あるいは尾張藩、あるいは東北の最上藩といったようなかたちで取り残されていく危険性があるんと違うんかいな。そう懸念いたします。
変化を見ようとする者と見ようとしない者の格差。易経という中国古典の教えがありますが、その中に「窮すれば変ず、変ずれば通ず」という教えがあります。困ったなと思ったときは、まずは自分がどういった点で変わらなきゃいけないかをしたたかに点検して、敢えてその変化に身を投ずるその気持ち。これが「窮すれば変ず、変ずれば通ず」であります。ところがいい加減な人々は「窮すれば通ず」ということを祈りに転換させながら、自分は何もしないでただその変化の後にやってくる安逸な環境を期待することがまま多いということを易教は戒めております。
「窮すれば変ず、変ずれば通ず」変というのは変化の変ですね。この変化することが最も重要であるという認識は今、実はこのコンサルティングを展開しておられます、非常に英知の豊かな知識的にも集約の非常に強い皆さん方が国内的な法律、国内法に基づく情報技術の集積は豊富であっても、それが新しく展開されるアジアの民衆がそれぞれの政府を前提として訴えてまいります環境に適合しないとするならば、その適合条件は一体何になるのかということを、本格的に組織的な吟味を加えるときが今きているのではないか。この協会にもその覚悟は当てはまるのではないかと考えるのは私が異端者であるが故であります(笑)。
しかし古典の中で最も気をつけるべきことは、優秀な人間は「その長ずるところにおいて滅ぶ」という言葉があります。俺は東大を出たから大丈夫だ。俺は国土交通省とちゃんと連携を取っているから大丈夫だというふうな自分の持っております立場、資質、そういったものに対して自信を持っておる人ほど実は大きな変革期には大変危険な状態に立ち至っているという自覚が必要であると、古典は語ります。「その長ずるところにおいて滅ぶ」。言うならば長じていることは確かに有効な資質でありますが、その長じているものが適応先として有効な場合は長じていることが有効でありますが、長じていることが故に返って排除されるという、そういう状態ができあがることも十二分にある。価値多様化の状態。この国際化というのはスピードをあげて我々に違った価値の身繕いを要求して参ります。その要求の中身に必要以上にベンチャーをやり、環境適応能力を高めようとするばっかりに急ぐんではなくて、あくまでもそういった環境で自らの存在感をはっきりと示すためには何が必要かということをしっかり吟味して自ら変えなきゃいけないことを変えていく努力。これは組織決定において絶対にやらなきゃいけないことであると私は確信をもっております。
国内的に地域振興のために石破 茂大臣は頑張っています。そしてこれから安倍内閣は本格的に、この未だにデフレの残映を引きずっております消費社会に対していろんなかたちの刺激を加えるでしょう。言うならば、中小零細企業もようやく設備投資に徐々に歩を進めようとしています。そうした環境の変化をじっと見ながら、黒田日銀総裁と安倍首相だけが勝手にやっているアベノミスク、このアベノミクスはどっかで失敗するだろうと思っておった人々を尻目に、予定通り日本はそこに新しい経済価値を打ち出そうとしています。日本の海外資産がついに中国を抜きまして世界一になったということは、昨日のニュースで安倍内閣は新しい使命に弾みをかけるべきでしょう。これは株式がちょっと2万円の大台を確保した中で、確実に歴史的なエポックを画したという自信に基づいて出発すべきだろうと思います。これとてFRB(米国連邦準備制度理事会)のイエーレン議長発言次第でいかようにも左右されましょうが、行方も知らぬ恋の道かな。日本のマーケットに期待を持っております国債ファンドが一斉に日本のマーケットから脱出するか再投資に動くかでありましょう。そういうような事態のもとで、まさにアベノミクスは根底からひっくり返るのかどうか。アメリカの金利政策の方向付けに新しい期待と夢をかけさせていく、腰のすわった日本のマーケットをつくらなければなりません。
そうなってくると、日本の国内における経済政策の成功と失敗は明らかに対外的な国際上のグローバルな経済戦略とも密接に関わってきますが、そこで国内的な問題と並行しながら国際社会の中に新幹線やあるいはロボットあるいは、環境技術や様々なものを展開していく道すがら、マーケットはシャープに大きな外科手術を求めました。「創業者の早川徳次さんがあの世で泣いてはる」とシャープのファンは申しますが、私はシャープが鴻海(ホンハイ)という台湾ギルドとの間で取り交わしたあの経済外交における失敗というものが、今、永年のつけが大幅に回ってきている証拠であろうと思います。日の丸の半導体、日の丸の様々な燃料電池の集団、いろんな新技術、先端技術を軸としながら今日本は医療技術の先端的な医療技術、あるいは鉄道ビジネス、あるいはロボットビジネス、あるいは様々な技術的なノウハウ、しかもそれは質的においても量的においてもイノベーションの高まりに経営資源を集中して、決して中国が追従できないようなものであるということをしたたかに論証していくっていう大事なプログラムに日本のアベノミスクは差し掛かっているということです。
どうか皆さん方にお願いしたいのでありますが、情報との付き合い方には是非とも思い込み症候群に陥らないでいただきたいと思います。中小企業の一番危険なのは思い込み症候群です。こういうものなんだという思い込みです。もう一つは、思いつき症候群。これやと言って動いていくととんでもないことになると思います。中国のマーケットは今まさにこれから皆さん方が活動する非常に大きなマーケットであります。しかしその非常に大きなマーケットは非常に大きなリスクを伴っております。ならばそのリスクと我われがこれから進出していかなければならないときのフィールドワークとの間にはどのような調整が必要かということを今のうちに準備しておいたほうがいいと思う。これは戦争に負けたらこういう生き方をしようと言った昭和18年から19年にかけての日本の心ある人たち、特に吉田 茂。あの留置所の中におりながら、敗戦後の日本を考えておった吉田 茂。あれと同じように私たちは今、崩壊する中国の経済後のしたたかな中国、その国際的な市場としての中国に我々は何ができるかということを、今のうちにじっくりとシミュレーションしていくことが最も必要な課題である。これが一点です。
第二点はですね、情報は兵器であるという認識であります。様々な情報を新聞、テレビ、雑誌、あるいは講演会というところで情報を仕入れます。インテリジェンスというやつは、どういうものかって調べていきますと、データではありません。あるいはインフォメーションでもありません。あくまでもお金を出して買えないもの。貴方の頭脳の中でデジタル症候群が妨げとなってアナログ症候群はほとんど機能しなくなっているというようなことをもういっぺん振り返りながら、私たちは6人の参謀を自分の周りに作らなければいけないということを特に強調して皆さんに訴えたい。
優秀な人間ほど6人の参謀はいないんです。
ならば6人の参謀とは誰と誰だ。一番の大きな参謀は「情報参謀」ですよね。いわゆるインテリジェンスをどのように集約するかという情報参謀です。この情報参謀は思いつき症候群じゃ困ります。思い込み情報群でも困ります。あくまでも情報の持っております一つの方向性や真価をしたたかに読んでいくという感性と検証力、推計力が必要でありましょう。
そして次には何が必要かというと、「資金調達参謀」であります。資金調達ができもしないくせに偉そうな顔をするなと言われたらそれっきりでありますからあくまでも資金調達参謀というのは絶対的に必要な条件だろうと思います。
でも二つの参謀がおるだけでは十分ではありません。まず社内における「労務参謀」。労務において「上下欲を同じくする者は勝つ」という孫子の兵法があります。上が言ってても、何か言っとるらしいでというのは、そういう部下だけでは困ったものです。亭主が言っていることを嫁はんが違ったことを言う。これは安倍 昭恵さんが、「あの人ねぇ、原発再稼働って言ってるけど私は反対」ってなことを言ってるのは、あれは逆説的なジェスチャーでありまして、昭恵さんのあのスタイルはあくまでも参謀的な役割を果たしていると思います。
昭恵さんもファーストレディーとして世界を廻りながら「うちの安倍は決して単一な価値観だけで動いているじゃありません」と。彼女は彼女なりにいい側近参謀をやっていると思います。そうなんです、情報参謀、そして資金調達参謀、更には「側近参謀」。これは非常に必要なことであります。側近の王 岐山に振り回されている習 近平国家主席は非常に危ない。しかしながら王 岐山なき状態では上海閥の江 沢民を押さえ込むことはできません。江 沢民の命が長らえている間はじっと待ちながら江 沢民が死ぬまで動こうとしないのか。あるいは敢えて江 沢民が必要としている曽 慶紅まで逮捕に踏み切っていくのか。非常に大きな問題でありますが、そのへんの「戦略参謀」。この戦略参謀はそうした中から培われてくる参謀であろうと思います。労務参謀は「上下欲を同じくする者は勝つ」という孫子の兵法を軸にしながら吟味に吟味を重ねつつ、社内における討論と検討を怠らないような会社にもっていかなければいけない。
そして同時に自分たちが付き合っている者は協会の中の人間だけである、これが一番危険なのは同質情報。同質情報ばかりを相手にしてこういうもんなんだと言っているバカボンのお父さんみたいな考え方を絶対捨てることであります。異質情報、つまり違った環境、違った業界。その違った業界との間に様々な「渉外参謀」の能力を発揮できるようなそういう体質を作らなければ協会はますます劣化し老化していくだけである。これは密かに思わなければいけない問題であります。
大事な参謀の6番目、これは「諫言参謀」であります。諫言参謀というのは一番言いにくいことを言うべきときにしっかり言う人、この人を何としても置かなければなりません。しかしこの人は不?の士であります。不?の士というのはお金を払っていない参謀です。お金を払うや否や人間という者は言いにくいことはなかなか言わなくなるのは当たり前で、あなたの隣にいる専務、絶対にあなたの逆鱗に触れるようなことは言わないでしょう。しかしそれを言ってもらうのが専務の仕事であります。言うならば「諫言参謀」。自分の身分が危なくなっても敢えて全体のためにはこれは言わねばならんというそういう武士道をもっております人物をあなたの横においていますか。金を払わなくても、ちょっと待ったと言って本社の玄関から入り込んでくる諫言参謀はあなたにいるでしょうか。こういったときに私たちは同質融合をしている会社ほど諫言参謀は存在しないのであります。
情報は兵器です。その兵器が誤ったかたちで導入された場合、私たちは前途を見失います。あくまでも戦うべきか、あるいは守るべきか、あるいは退くべきか。様々な状況の中に十二分な戦略参謀の適合能力を発揮する集団を築きあげていくためには、そうした情報分析と諫言参謀とを前提とする組織全体のバランスをトップはどれにも偏ることなく側近参謀にも情報参謀にも諫言参謀にも偏ることなくそれを調整しそして間断なく戦いに臨まなければならない。
「私はワンポイントリリーフです」と言いましたね。あれは恐るべき予言です。ワンポイントリリーフってことは諫言参謀でありますということです。言うなればそういうワンポイントリリーフということは私たち中小企業にとりましても非常に重要な諫言参謀の位置づけとしてこれからも大いに周辺に確保していかなければいけないのだろうと思います。
みんなそれぞれ自分に善かれかしと思って行動しています。生産現場に振り回され、中国は大変な生産過剰に見舞われています。それは急激に急いでやった日本も橋本内閣の頃、これと同じような状態に陥りましたね。過剰生産はマーケットに向かって何とか売らなきゃなりません。鉄、セメント、その他もろもろの大量生産は、いま不良在庫となって山のように中国の各地に展開しています。それをじっと見ながら丹羽宇一郎という当時の中国の大使がいました。丹羽大使は表向き伊藤忠のために末端の毛細管のような流通構造をチェックすることに全霊をかけたと陰口をたたかれました。ちょうどあの尖閣諸島の大問題が起きている真っ最中、反日キャンペーンが行われている真っ最中に丹羽宇一郎は奥地へ奥地へと調査の足を伸ばした。あの事実は私は敵中三千里じゃありませんけどね、山中峯太郎のような動きであったように思います。「中国大使としての職分を十二分に生かして日本企業の対中国流通戦略の基礎を築きましたなぁ」と言いたい。要は、不良在庫処理の、苦しまぎれのAIIB作戦の正体を見事調査し抜いた成果でした。
しかし個人は橋下 徹代表にしても安倍晋三首相にしても個人は国家の懐中で何らかの冒険をするということを考えています。私はロスチャイルドの息のかかった、渋沢栄一とかあるいは岩崎弥太郎とか森 有礼とかあるいは五代友厚とかいう人々はその当時ロスチャイルドというヨーロッパ資本が日本の近代化にいかに必要であるかということを前提としながら、敢えて相手の意図をしたたかに体感しつつも、日本近代化に向かって命をかけた人々であったと思います。しかしながらロスチャイルドのそうした思惑というものがいき過ぎてしまう。日本の国内にいき過ぎたことが返って日露戦争へと駆け込んだ日本でした。多くの怨念をアジアに残してしまったという日本の近代史。その近代史に対して、安倍首相は先人達がやりました問題について何らかのかたちで村山でも河野でもない、宮澤でもない、小泉でもない、安倍晋三首相らしい談話をこの7月には発揮しなければならない。昭和史における日本の田中義一内閣が対中国21箇条要求を突きつけたときに袁 世凱はどう応えたか。そしてその時の孫 文は蒋 介石を後ろに束ねながらどう対応したか。そしてこの中国と日本との間にどのような同文書院の努力が展開されたのか。歴史における様々な問題点を率直に謙虚に開きあいながら共通の歴史をつくりあげていこうという努力をこれからは必ずしなければならなくなると思います。
日本は近代史に学べということをしきりに韓国も中国も言っておりますが、近代史を学べば学ぶほど中国は困ることがあります。韓国も困ることがあります。しからば中国と韓国が困っていることはどの問題なのかということをしっかり検証したうえで、それに当面触れないで向こうはそれに気がつくまで時間を掛けていくという対外交渉。これからの渉外参謀として最も必要な努力でなければならないと思います。側近参謀にはそういう渉外能力も身につけてもらわなければいけないということを前提としていくことも大事な鍵ではないかと思います。
ジャイカ(JICA)とかアジア開発銀行(ADB)とかあるいはジェイぺック(JPEC)とかいろんな組織が今度は連携して、三つがばらばらにやっておったんですが、「AIIB」がきたら放っとけないんですよ。アジア開発銀行は国際協力銀行とか、国際通貨基金(IMF)とかが全部一緒になってやっていこうとする。となると我が協会もそうした国家的な連携プレーが正面に出てくる段階に備えどんな知恵が広がるのかってことを予測しなければいけないし、これを予感するための情報参謀を必ず皆さん方は周りにおかなければいかんでしょう。ならばその情報参謀も集約いたします様々なインテリジェンス、これを集めていくためには総会でもってしゃんしゃんしゃんと次のビールを飲むための時間のための会議を開く必要は絶対ないのでありまして、今こそそういった迫り来る時代を読もうとする気持ち、あるいは迫り来る時代を、いやそれはわしの息子の代の時代であってわしの代には関係ないんじゃと言って逃げまどう、それを見ようとしない精神。この二つの戦いがこれから日本国内のさまざまな業界で同じように展開されるだろうと思います。
そうした見るべきものを見ようとする勇気、そして見ないといけないものを見ないで済ます惰気、そういった気持ちを乗り越えていくためには前進する協会として今後の課題をしっかりと目の前にスリープアウトしてこなければいけないのではないか、こういうふうに思えてなりません。
この問題意識を研ぎ澄ましてください。そうするとその問題意識に触れるような話が出てきた時にきらきらっと意識が覚醒します。これを電子的な同調と言いますが、情報上における電子的な同調、これを絶えず意識して新聞にもテレビにも、そして講演会にも臨んでいただくことを心からお願いしたいのと同時に、端末、大きな時代のうねりの端末は小さなニュースとなって我々の前に登場いたします。その小さなニュースが暗示している問題、例えばサウジアラビアの王様が死んでイエメンにおける様々な反政府勢力が強化されたというニュースを見た途端に、待てよ、スンニ派のサウジアラビアがシーア派のイランとの間にどのような対決をしていくだろうか。それはイランが逆にISを今こそシリアとイラクにおいて、ISを攻撃しているけれどもその攻撃を急に止めて実のところバクダッドまで迫ってくるISの勢力を逆にテヘランにまで引き受けるようなことがもし起きたら、これはどういうことになるか。それはタジキスタンとウズベキスタンを通って一気に新疆ウイグルにも猛烈なスピードでISの思想がアジアに波及するでありましょうし、インドネシアというあの猛烈なイスラム国家、あるいはミンダナオ島に主力をおいておりますフィリピンという国、さらにマレーシアというこれまたイスラムの国家。そういった国々が今後アジアにおいてISの今後の助長にどう呼応するかもこれまた放ってはおけません。ISを発生させている裏側にはどんな勢力がいるのか。私はそんな仮説を立てながら毎日見ることにしています。どうも空爆をしている、あたかもISをやっつけているようにしているけれども、どうもこの混乱を軸にしながらロシアの南下政策をチェックするとか、あるいは中国のアラブやアフリカに対する、特にナイジェリアあるいはスーダン、ソマリアというところに出ようとしている中国の対外戦略をチェックしようとする軍事的な意図が影響しているんじゃはないかとそういう大変意地悪な仮説をたてながら見守ることにしております。
小さなニュースの向こう側にどんな大きなニュースが潜んでいるか。しかし小さなニュースはよくよく見つめると小さなニュースとして消え去っていくものでもあります。大きなニュースを含んでいる小さなニュース、それを見つけるのがあなたのインテリジェンスであるということを前提としますと、新聞はいい加減な見出しだけを追っかけていく読み方をしてはならないと言えるとおもいます。あれは何百人の新聞記者がいろんな外電を消化しながら、デスクワークを通じて見出しを大きくしたり小さくしたりやっているわけでありますが、あくまでもデスクワークに限ったことでありまして、新聞社の持っております大きな見出しのニュースはひょっとすると単発的なその場限りのニュースの場合があります。同時に小さなニュースでもこれを載せておかないと後々大きなニュースが起きたことに困るという存在証明的な小さいニュースもあります。そのニュースをしたたかに毎日検索していくことで、新聞の購読料は安い価値のある報道であろうと思います。
私たちは案外情報は兵器であると言われておりながら情報に対して無頓着な毎日を送り続けているような気がします。気に入った人間の言うことだけを情報として信用する、この誤った価値観を超えて、「気に入らない者が言うことは一番重要な価値である」ということを是非とも皆さん方の受信装置の中に置いていただきたい。気に入らない、異質情報を受け止めていくというその態度を是非とも持っていただきたい。たまたま赤旗も読んだほうがいいと思いますが。この中に赤旗のファンがおられたらごめんなさい。
少なくとも今度、橋下 徹代表が負けたのは、あれは平野区とそれから天王寺区、これを拠点とする大阪フラクション、共産党の力によって二万票は動いたのでしょう。その二万票が、あの一万票の格差の重要なエレメントであったというふうにわたしは解説をしていますが、果たしてどうか。大阪市民が都構想の持っている将来道州制への大きな思い入れ。これをもしここで通しておったならば、日本中は大阪府民を、大阪市民を見直したであろうと。やっぱりノックの大阪かと言われるようなそういう状況下に敢えて甘んじた今度の都構想選挙というものは非常に大きな判別式、リトマス試験紙と、そういうものであったような気がしてなりません。だからといって拒絶された数字が九千票か一万票ぐらいのそこそこの差であったということは大いなる願望であります。よくぞ60万に匹敵する大阪市民のインテリジェンスのありようは近未来的なもの、あるいは長期未来的なもの、そういったものを実に敏感に反応するいかにも大阪人らしい数字であったという見方をします。この59万票と60万票と、どういうふうな評価をしながら今後における市長選挙、12月の市長選挙を大阪市民は打ち出すのでありましょうか。そして大阪維新の会は日本の維新の党と一体となったこの一つの政治的なアクションが今後ただ盛り場となって消え去っていく運命なのであろうか。
私は維新の党が〝維新〟の党であるかどうかをはっきりと日本の現代政治史における証明をするかどうかの重要な端境期にきておると思います。
吉田寅次郎を処分し、そして奇兵隊が旗揚げし、いったん敗北した後、奇兵隊は久坂玄瑞の蛤御門の敗北を奇貨としながらどのように大きな体制変革への起爆剤となったかという歴史の教訓もよく見極めたときに、私は今度の橋下 徹代表のチャレンジは誠に爽やかな、誠にリトマス試験紙としての効果を発揮したものであるということをしみじみと実感せざるを得ません。
日本の公共事業っていったい何だろう、公共事業っていうのは民間資本を導入してやるよりもはるかに効率的でしかも公平性があって、これまではすばらしい資金投下の大きな狙いだと思います。しかし公共事業は国家的なファンドだけでやろうとしたら必ずその国家の政府は持続できません。民間のファンドがその公共事業に対してどうコラボし、どのように調整しのってくるか、これを考える知恵、この知恵がなければなりません。協会はまさにそのややこしい問題、公共事業という大きなしかも透明性の豊かな公平なお金に対して、それが地域社会における様々な効率的な付加価値を生み出していくためのコーディネーターとしてどう機能するかということが期待されている集団であるということを考えた場合には、公共事業に投下される国家ファンド、そしてそれに協力する民間ファンド。この両者の力をですね、どう調整するかということが新しい課題・使命となってゆくということを絶えず公正に展開して欲しい。
それはとりも直さず、「AIIB」に対して日本とアメリカとが中国だけに偏った資金供与の動きではなく、本当のアジアの幸せを考えるためにはアメリカと日本が考えるこのアジア開発銀行を中心としたやり方をきっかけとして「AIIB」の路線を修正させるべきだというこの日米の動きは大変重要な価値のある動きであるというふうに思います。
どうかお願いいたしますが、皆さん方は今までの日本の政府が打ち出しました公共事業に対する対応力だけで終始してきたけれども、そうではなくてこれからはアジアワイドにあるいはヨーロッパを含めながら日本の国民が生み出しました生産価値、その生産力量や価値感が世界に向かって同調され評価されるものとなって認められるような橋渡しをやられる重要な国際人になっていただくことが大事ではないかと私は考えます。
日本人の戦後70年間、原爆を投下されてそして原発の再稼働に続いてこういうかたちのエネルギー政策の大きな矛盾点を抱えているけれども、プーチン大統領は必ずやノルウェーにおけるあの10万年以降においても放射能を確実に処理することができるということをノルウェー政府にやらせました。その成果が実らずと見るやプーチン大統領の腹の中には世界が困っているだろう、我がロシアは東シベリアにおける200キロ圏内において誰1人住んでいないこういう広大な地域を持っている我がロシアは、世界が悩んでいる、処理済み燃料棒を原子力発電所にともなうゴミを処理するためにこういう用意があるということを世界に訴えた場合、アレバというフランス、あるいは日本の三菱重工、あるいは東芝、日立、全てがこのロシアの呼びかけに対して待ってましたといってくっついていくんじゃないか夢見ています。
昨日のニュースでは日本列島の様々な自治体に対してこの処理場を構築するために賛成の方はどうぞ声を挙げてくださいとやっていますね。あんなのはいかにも日本的な情報戦略ですね。明らかに今、安倍内閣の中枢部にはロシアはそうした原発の使用済み燃料棒の処理について国際的な貢献をする用意があるというものを持っていそうな気配を感じながら、そうした地球上の原発エネルギーの維持を視野に据えているのではないでしょうか。中国はあと22基造りますね。ロシアもたくさんの原子力発電所をシベリアに必要としています。そのニーズに応えるべき大きな処理場、最終的な出口である処理能力を持っていない日本では、私は日本のエネルギー政策は国際化の図式の上で勝負すると思います。そうした意味合いにおいても今後のロシアとの取り組み、そしてアメリカではとてもそれはできない、そういう課題を持っているロシアをどういうふうに手なずけるかと言っちゃ言い過ぎでありますが、日露の関係の中には大きな意味合いがある。
このまま放置していると、「日本も核武装をしてもらわんとかなわん」とか「日本と韓国が核武装することによって北東アジアにおけるバランスがとれるんだ」というようなことを言う人もちらほらと現れている。しかしそういうことを日本の安倍内閣は言おうものならたちまち瓦解するでありましょう。日本は核武装しないけれども、しかしながら核武装に代わる新しい日米関係の強化、これをやるということよって取りあえず突破してまいりますけれども。確実に日本は拒否権を持っている国連における〝安全保障理事会の常任理事国〟になるというこれ壮烈な選挙運動は今始まっていると思います。あの国連における安全保障理事会の常任理事国という一人前の重役入りになること。これが大変な安倍内閣の課題であり、憲法改正はその次であるということを前提としながら国連対策の問題点に是非皆さん方の気持ちをしっかりと定めておいていただきたい、これは私の今日の最後のお願いでもあります。
お手元に配りました、実に汚い、見ちゃおれないような資料でありましたけれども、その資料が訴えていく情報的な価値、これを是非とも読み取っていただいてこれからのお役に立っていただければ幸せとなります。どうかこの資料を持って帰って後はどこにあるのかわかれへんてなことはないように、できれば皆さん方の明晰なるコンピューター機能によって、きれいなパソコン処理をしていただくことを心からお願いして私の講演を終わりたいと思います。ご静聴いただいて本当に、本当にありがとうございました。