「自衛隊の活動と災害救助」
参事 米津 浩幸 氏
今ご紹介にあずかりました米津と申します。どうぞよろしくお願いいたします。又このような機会を与えていただきほんとうにありがとうございます。ここにいらっしゃる皆さんはほとんどだと思いますが、自衛隊と言うのは別の世界と言いますか、身近に感じる機会というのはなかなかないと思います。テレビなど見て、何か災害派遣とかやっているなという点からしか見られたことしかないのかなと。たまに、伊丹の近くとか八尾の近くとか自衛隊の車が走っているというのが、皆さんが感じられる自衛隊の姿だと思います。私は昭和61年に防衛大学校というのを出て、それからずっと自衛官をやってまいりまして、パンフレットの後ろから3枚めくっていただくと、自衛隊の職種、主要装備品及び編成という欄があります。その一番左側の下のほうに施設科というものがあります。私はこの施設科の所属になっておりました。自衛官というのはこのページにあります4×4の16個の、職種と陸上自衛隊では呼んでおりますが、このいずれかに必ず属します。高校を卒業して自衛隊に入る方がいらっしゃいます。そうすると、最初に3か月間の教育を受けます。このときには、特に普通科とかそういうのは決まっておりませんが、3か月過ぎたところで、「あなたは、はい、普通科ですよ」となります。そのほか、普通科ですよとか野戦特科ですよとかそういうのが決まりまして、それぞれの部隊に赴任していくというふうになっております。なんでそんなことをするかと言いますと、やはり、一つは人事管理上、そうしないとなかなか人事管理ができないというのと、やはり我々、簡単に言うと軍隊ですので武器などを扱うのに適正な人員がいないといけないんですね。戦車乗りが少なかったら困りますし、大砲を打つ人が少なかったら困りますので、陸海空自衛隊は年間9,000人くらい採用しておりますが、9,000人のうち例えば3,000人は普通科ですよとか、500人は施設科ですよとかそのように枠を決めておりまして、それぞれに応じた人員を配置しているというようにしています。ただちょっと特殊なのが右下のほうで、音楽隊とありますが、音楽隊はちょっと珍しいところでして、職業で音楽ができるという方はなかなかいらっしゃらないんですね。有名な交響楽団とか入っていらっしゃる方も日常は音楽教えておられたりとかをやられて糧を得られたりしておられますが、自衛隊の音楽隊に入ることによって公務員として入った瞬間から定年までずっと音楽で暮らしていけるんですね。そういう意味ではなかなか珍しい職域と言いますか、職種と言いますかそういうところがあります。どうやって採用するのかというと、例えばトランペット今年は5人とかクラリネット3人とか、太鼓を2人とかそういうようにして採用します。従って最近はものすごい倍率が高いですね。トランペット奏者、例えば年間5人の採用という年度の場合、普通の高卒のブラスバンド部ではなかなか合格できなくて、やはり音大を出た方とかそういう方が今入ってきておりまして、音楽科というところは非常に高学歴と言いますか、そういうところになっています。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この中部方面隊というとこには歌姫の鶫(つぐみ)というのがおりまして歌でちょっと有名になっております。このように、今は声楽科卒も採用するようにしておりまして、歌でも自衛隊員の士気向上、自衛隊のPRに貢献していこうというようにしています。このページのように16個ありますけど、16個の機能のすべてを持っているのが師団です。よく戦記物とか読まれる方もいらっしゃると思いますが。司馬遼太郎の世界とか、その中では師団という表現がよく出てきますが、この16個の全てを持っているのが師団と言います。従って自衛隊は自己完結型の組織だと言いますが、これ全部持っていますので、師団はですね、自分で何でもできるというようなことになっています。
今日はですね、大きく自衛隊は何で存在するのみたいな話から、自衛隊の先ほどちょっとご紹介しました師団はこんなんですよとか、皆さんが今後テレビとか見るうえで基礎的な知識になるようなですね、お話をさせていただけたらなと思っています。それと最後に私、奈良県から来ておりますので、ちょっと奈良県のPRと言いますか、私が今担当しています大規模広域防災拠点というのを今、五條市に一生懸命作るようなことをしておりますが、今日来られている方の中にもお世話になった方が多分いらっしゃると思うんですが、そういったご紹介をさせていただければと思います。
先ほども司会の方からもご紹介していただきましたが、私は東日本大震災と紀伊半島大水害に災害派遣で行ってまいりました。東日本大震災、ちょうどその頃はだいたい400人くらいの部隊の長をしておりまして、皆さんもご存じの金曜日に発災しましたので、それから準備をして日曜日には東北の遠野というところに、釜石市のすぐ隣ですね、遠野というところに行きまして、月曜日には現場に入って釜石市とその隣に大槌町という町があるんですけれどもそこで活動しました。紀伊半島大水害の時は同じ年の9月4日に土砂崩れが起こりまして、その時は私、奈良県の災害派遣を担当する隊長をやっていましたので4日に行ったんですけれども、ちょっと私、お酒が好きなものですから、3日から実は夜飲んでいまして、いきなり1時くらいに電話がかかってきて、災害派遣ですよって、そのまま現地に直行して、十津川村、五條市というところに行ったという覚えがあります。その後ずっと一カ月半くらい十津川村と五條市で暮らしていたというのが実態です。そういったご縁で奈良県庁に再就職しまして、今やっておりますが、就職してすぐに大阪北部地震が起こりまして、奈良はあまり被害がなくてですね、大きなことにならなかったんですけれども、そういったところで活動したということです。この画面はちょっとご紹介ですけれども、これ大槌町という町の写真でして、このように津波で一つの町が完全にやられているんですね。現場に行きますと、ちょっと当時の話をしますと、死体がごろごろしていました。津波というのはこうなるんだなという体験をしました。初めての土地で初めてのところですので、大久保駐屯地からの前進となりましたので、一回一回人を集めて次はこうやるぞ、というのをやはり途中途中で示さないとなかなか隊員がついて来られません。大久保駐屯地という宇治市にありますけれども、そこを出発したときに、まずどういう命令を受けたかと言うと、「仙台に行け、仙台に行け」ということです。「仙台のどこですか?」「まぁいいからとりあえず仙台に行け。仙台に行くうちに行き先を示すから」と言われました。当然、無線機を持っていますので、「はい」と言ってそのままとりあえず仙台に向かいました。途中途中でですね、「次はどこ行くぞ」「どこ行くぞ」と次行くところまで示さないといけません。次の駐屯地はどこに休憩しますか、というのも、さすがに5時間も6時間も運転しっぱなしというわけにはいきませんので、途中途中で示しています。着いたら、まぁ画面のこんな感じですね。まだ雪も残る3月13日14日でしたのでこういう活動をしていました。これは遠野市というところで、釜石市と大槌町というところなんですが、リアス式海岸でして、リアス式はやっぱり津波の被害がもうひどかったですね。入り江が全部やられるというのを見てまいりました。
話が変わります。自衛官がこの時期にここで話をするというのは、やはり皆さん、ウクライナの情勢をちょっと見るうえでの視点といいますか、ただテレビを見て悲惨だなとかかわいそうだなというだけではなくて、こういう感じでみていただくといいなということをちょっと今回ご紹介させていただきます。
それで、基礎的なことを皆様にちょっとご理解いただければなと思っておりますので。今、ウクライナの戦いでいろいろな言葉が出てきています。例えば砲弾、ミサイル。違いは分かりますか。砲弾だったとか、ミサイルが飛んできましたとか言いますけども、違いは分かりますか。あるいは地対地ミサイルとか、地対艦ミサイルとか、あるいは巡航ミサイルとか弾道ミサイルとかいろいろな言葉が、解説者の方から出てきます。防衛省でいうと防衛研究所の兵頭部長とかですね、ああいう方からいろんな言葉が出てきます。例えば砲弾とミサイルでは何が違うのか。砲弾というのは弾と火薬が別なんですね。よく戦争映画でぱっぱっぱっと銃を撃つと薬莢がぴょんぴょんと飛び出しますね。空薬莢が。ああいうふうに薬莢を燃やしてそれを爆発させて前にある弾を押し出すというのが砲弾と言います。それに対してミサイルというのは自らロケットと一緒ですね。日本がよく鹿児島の方でロケットを打ち上げますけど、あれと一緒で、その全部の中に推進燃料が入っていてそれ自体が全部飛ぶというのがミサイルと呼んでいます。そこに違いがあります。地対艦ミサイルというのは何かと言うと、地上にあって、船に対して撃ちますというのを地対艦ミサイルと呼びます。この前、黒海のところで、モスクワというロシアの旗艦がやられましたけども、この地対艦ミサイルでやられました。このミサイルは地上、ウクライナの地面の上にあって水の上にいる艦艇を撃つミサイル、これを地対艦ミサイルと呼んでいます。地対空ミサイル、地上から空に向けて撃つのは地対空ミサイルといいます。艦対艦ミサイルですとか、空対空ミサイルとか、戦闘機と戦闘機の戦いが空対空ミサイルでありますね。そういうふうに呼んでいます。一方、巡航ミサイルとか弾道ミサイルという言葉も聞いたことがあると思いますが、巡航ミサイルというのは、普通に飛行機のように飛ぶのが巡航ミサイルと言います。弾道ミサイルと言うのは書いてある通り、例えばホームランを打つようにボールをびょーんと撃って弾が放物線を描くように飛びますけれどもそれを弾道ミサイル、弾が飛ぶような道筋を通るということで弾道ミサイルと呼びます。どっちが精度がいいのかというと、精度はほとんど変わりません。どっちも今はGPS付きの弾ですので。ただ一般的には遠くへ飛ばすにはホームランと一緒で、やっぱり弾道ミサイルがいいですね。近頃、北朝鮮が撃つのは弾道ミサイルと言いますけれども、遠くに飛ばすにはやっぱり弾道ミサイルがいいです。巡航ミサイルというのは空気が濃い、地面からあまり離れていないところを横に飛びますので、あまり遠くまで飛べないんですね、燃料の関係で。従ってロシアの本土からよくポーランドの国境まで、今ロシアがミサイルを撃っていますけどもほとんど弾道ミサイルですね。テレビを見られるときに、こういった知識を持って見られるとまたちょっと理解が進むのかなと思います。
ロシア軍とウクライナの話を続けさせていただきますが、これは防衛省のホームページにある画像なんです。これを見ていただくと、ロシアはですね、33万人の陸軍、202万トンの船、船の総トータルですね、202万トンある。1,380機の作戦機を持っていますというのを表しています。イギリスは例えば陸だけでいくと8万人、フランスは11万人、ドイツにいたっては6万人しか陸の兵力がありません。ロシアは33万人。イタリアは10万人くらいですね。これが今ヨーロッパの現状です。では、ウクライナとロシアの戦力をちょっと比べてみたいと思います。日本地図にウクライナの地図を重ねているんですが、ここが鹿児島でここが青森ですね。このブルーがウクライナの地図です。日本はですね、37万8千平方キロです。ウクライナはなんと60万平方キロ。日本の1.6倍の国土があります。なかなか地図はいつもこう、ワイドショーとかNHKニュースの地図は小さく出るものですから画面に全部の国が入るように。ちょっと小さいのかなと思いますけども、私もよく調べたら日本の1.6倍というのをみてびっくりしたんです。それくらいの距離感なんですね。日本には1億3千万の人口がいますけれども、ウクライナは4千400万といわれています。そのうちのもうすでに600万人くらいが国外に避難したと言われています。そういうのが今のウクライナとロシアの状況です。
ここがキーウです。ここがマリウポリ、この距離ですね。どれくらいなのかなと思ったら、なんと大阪市から計るとだいたい仙台、盛岡の間くらいの距離です。ですからマリウポリがやられていると言って、キーウは結構普通に車が走っている映像が出たりしますけれども、あるいはいろんな国の人がですね、この前イギリスの首相が行ったりしていましたけども、意外と国境まで離れているんですね。それは仙台から北のだいたい盛岡ぐらいで戦争をしていて大阪ではイギリスの首相が来て話をしているという、そういった距離感です。ですから、戦争はしていても首都は意外と、たまにミサイルが飛んできますけれども、そんなにばたばたしてないというところがわかると思います。それをいつもワイドショーとかNHKニュースとかは小さな地図を写すものですから、すぐ近くでドンパチしているように見えますけども、やっぱりそういった距離感が大切ですね。製鉄所の人たちが全員ロシアに連れていかれたという報道が流れましたけれども、だいたい盛岡ぐらいにいて戦いをしていた人たちが、青森に連れていかれたというような距離感ですね。ですので、キーウにいる人たちにはあまり直接的な、戦いの匂いと言うか、そういったものがあまり伝わってこないんだと思います。我々も盛岡で何か起こっていると言われてもなかなかピンとこないですね。盛岡まで行くとなるとまた時間もかかりますし。そういった距離感になります
これがロシアとウクライナの兵力の比較です。だいたいロシアが1億5千万人ぐらいの人口に対して先ほど言いました4千万人くらいの人口です。面積は60万平方キロとして1710万平方キロですから全然比べものにならないです。またロシアは公的には33万人くらいの陸上の兵力が記載されています。ウクライナは14万人くらいいると言われています。結構、両国はとんとんの兵力なんですね。なんでとんとんかと言うとロシアはいろんな国境を接していますから、中国からインドの方からずっとですね、その兵力をゼロにはできないんです。さすがに、全くゼロにするわけにはいきませんので、ウクライナ正面にまわせる兵力というのは100%は転用できないんですね。回せてもやっぱり半分くらいなんです、感覚的に。どんなに転用しても6割程度だと思います。そうするとピークでも18万人くらいなんですね。33万人ですから。ですのでほとんど回せる兵力は転用しているじゃないのかなと思っています。びっくりしたのは、海上202万トンあります。ウクライナは25万トンですから、すごいロシアは多いんですけども、まぁこれもロシアは黒海だけではなくて、北極海の方にも持っています。こちら当然ですね、日本の北の極東の方にも船を持っていますので、そうするとそんなに無茶苦茶ロシアが優勢かと言うとそうでもないんですね。ただ無茶苦茶優勢なのはこの戦闘機ですね。ウクライナは70機しかないと言われていまして、ロシアは1380機ありますのでこれは20倍くらい差がありますんでやはりその点においてはロシアは有利かなと思っています。
またテレビのワイドショーの話に移るんですけれども、よくこんな映像が出ます。ビルを破壊した、3月の頃よく出ました。あるいはこんな映像も出ますね。マンション1棟ことごとく壁がやられているという。何が違うと思いますか。
これは、弾の種類の違いによるんですね。私も現場を見てないので確実には言えないですけど、やはり戦車とか大砲というのは、やはり弾が小さいですので点でしか物を壊したり攻撃したりできないんです。ですが、東京大空襲みたいに航空機で絨毯爆撃のようにすると、やはり面で敵を攻撃しますので、このようにマンションも面でやられてしまうんですね。火薬量が全然違いますから、500ポンド爆弾とか1,000ポンド爆弾とかそういうのを聞かれたことがあると思うんですけれども、そういう中に入っている火薬量、1,000ポンドだと450キロということですから全然火薬の量が違うんですね。そうするとやはりマンションの前庭に落ちるとマンションの全面がやられてしまう。簡単に言うとどれくらいかというとですね、これ戦車の弾です。だいたい人が抱えられるくらい。これ実際の戦車の弾ですが、しかもちょっとこの黄色ところ、先ほども言いましたが、ここが爆発してこの前の方が飛んでいくんですね。ですのでさらに小さくなるわけですね。一方、こういう戦闘機とかの下についている爆弾は、ちょっと見づらいですけども、大人の体一人分ぐらいですね。ですので、もう薬量というか、火薬量が違いますので先ほどのような結果になります。ウクライナとロシアの戦争はこういった視点で是非今後画面を見ていただくと違いがわかるのではないかと思います。最近、ピンポイントでやられたのは実はこの辺に戦車がいるんだなと、マンションだとか全面やられているのは多分空爆でやられたんだなと違いが、見えてくると思います。近頃空爆でやられたというのはあまり出て来ないですね。それだけウクライナ軍がヨーロッパの国からいろんな装備を頂いて航空機が飛んで来たら撃ち落とせる能力を持ってきたからだと思っています。
次に、なかなか話が自衛隊までいかないですけど。次はアジアの状況を見ていただきたいと思います。先ほど、例えばイギリスは8万人、ドイツは6万人、フランスは11万人という話をしています。アジアでは北朝鮮は110万人います。中国は97万人います。インドはなんと124万人の陸軍がいます。韓国ですら46万人の陸軍がいます。一方日本は14万人ですね。これが今のアジアの現状です。よく日本の防衛費は高いんじゃないかとか、イギリスと同じ島国なのに8万人しかいないんだよと言う方がいらっしゃいます、いろんな評論家の人でもですね。イギリスは8万人しかいないのになんで日本は14万人もいるんだと。ただ見てください。イギリスの隣はフランスです。そのちょっと北はドイツです。絶対攻めてこないですよね。イギリスにフランスが攻めてくるなんて考えられないです。例えばドイツが攻めるなんて絶対考えられないです。ですが、日本の隣には北朝鮮がいます。なんと110万人の軍隊を持った。尖閣諸島の先には97万人の軍隊を持った中国がいます。やっぱり同じ島国でもイギリスの立場と日本の立場は違うんですね。そういうのをなかなかご理解頂かないでイギリスは8万人しかいないんだよってことを言われる方もいますけれども、やはりイギリスと日本の置かれた環境が違うんだというところをご理解頂ければなと思います。これがそれぞれの比較の表ですけれども、中国は97万人ですね、韓国は46万人いて、日本は14万人です。海上戦力は中国は日本の4倍持っています。212万トン、日本は51万トン持っています。作戦機は日本の350機に対して2,900機、中国は持っています。これくらいの差があるんですね。ここから今、日本の置かれた状況ですけども、中国、よくこれは普通に見る地図ですね。中国の領土はこのブルーで囲った地域が中国です。日本はここですね。北朝鮮、ここで97万人くらいの軍隊を持っているというのが今の中国です。これをですね、北京を中心に見ていくとこんな地図になります。これは樺太、これはロシア領ですね。千島列島はロシアが持っていますね、現実に。次に北朝鮮がこの海岸線を持っています。韓国はこの海岸線を持っています。中国の海岸線というのはこの点線のここだけですね。ここから先はベトナムの領土。北京がここにある。どうでしょう。さっき212万トンの海軍を持っていると言いましたけれども、北京から見ると、日本の位置はすごい邪魔ですよね。これは台湾ですけども、台湾も邪魔ですね。これ、フィリピンです。フィリピンも邪魔ですね。日本はほんとうに目障りなところにいますね。なかなか太平洋に出て行こうとしても日本と台湾とフィリピンが邪魔をしているというような形になっています。
この画面はですね、赤丸を入れましたけど、以前まで陸上自衛隊のあった本土の最南端はここに国分駐屯地というのがありますが、ここは九州の陸上自衛隊の最南端ですね、本土の最南端です。次はこの那覇に陸上自衛隊がぽつんと一個あったんです。これだけだったですね、以前は。ほんの20年前くらいまで。中国の立場から見るととてもいいですね。よくこの間を抜けて中国の艦船が太平洋の方に出て行ってますけれども、ここにあえて丸をしていますけど。ここは南沙諸島と呼ばれているところです。たまに話の中に南沙諸島という言葉が出てくる。聞かれたこともあると思いますが。ここも中国の領土だと言ってます、中国は。ちょっと考えられないですよね。中国はここまでしかないんです。ここはフィリピンなんです。なのにここにある島々は中国のものだと言っています。実際にもうすでに滑走路を造りました。そして軍隊が常駐しています。これが中国側から見た太平洋の実態です。それで、日本も、これはいかんということで、2019年には奄美大島に部隊を作ります。2016年、17年、18年には沖縄に戦闘機の数を増やします。2019年宮古島に駐屯地を作ります。2016年には与那国島にも作っています。今年、2022年の年度末には石垣島にも作ります。こうやって中国が海洋進出しないような体制をつくろうとしています。そうすると、丸の数が増えまして、この鹿児島から沖縄諸島にかけて中国に好きなことをやらせないという体制ができあがっていくというようになっています。このバツがですね、アメリカ軍の基地を指しています。青森県の三沢に米軍の空軍の基地があります。F-16とかが駐留していますね。ここはアメリカの海外の基地としては最大の横須賀基地があります。第7艦隊がいます。ここにはアメリカの海兵隊が岩国にあります。そしてここに東洋一の飛行場と言われる、なんと羽田空港の2倍の敷地面積を持つ嘉手納という基地があります。見てわかる通り、中国からは、非常に目障りですね。沖縄に嘉手納という米軍基地があります。地域的になかなか米軍は出ていけない、あるいは日本としても出て行ってほしくないというポイントはここにあるんだと思います。もしここの米軍基地がなくなると、この沖縄周辺の海は中国のやりやすい海というか、中国の意思がとても通りやすい海になる可能性があるんですね。米軍基地がここにあるからこそ、中国もなかなか好きなことができないです。以前フィリピンに二つの米軍の基地がありまして、クラーク空軍基地というのとスービック海軍基地というのがありました。それが2010年に撤退しましたら、撤退したすぐ2年後にここに、ここの南沙諸島は中国のものだと言って中国は出て来たんですね。なので、ここに軍隊というか、そこに基地を作ることによって力を発揮するというか、そこは全体として力の空白になってはいけないんだと思っています。
続いて、自衛隊の現状です。今の中国とロシアの続きになるんですけれども、このグラフはですね、航空自衛隊がスクランブル発進した回数です。国籍不明機が領土、領空、領海を侵入してきましたら、F-15、あるいはF-2がスクランブルと言って日本の領土に入れないような行動をします。その回数がどんどん今あがってきていまして、年間ピークで1,200回くらいです。1,200回ということは一日3回ということですね。それくらいの頻度でロシアの航空機、あるいは中国の航空機が来ているというのが今の実態です。それを近畿の近くですと小松基地とかまた、福岡にある築城基地ですとか、そういったところから出て行っています。関東ですと百里基地というところがありますけれども。そういったところからF-15が発進して、ここから先は日本の領空だから入るなということをしています。2011年は東日本大震災が起こりました。そしたら、前年は、2010年は420回だったのが2011年には600回に上がっているんですね。日本が東日本大震災でちょっと傷んでいるときに、中国とロシアは前年の1.5倍の飛行機を飛ばしてきているんです。それが世界の実態と言いますか。現実です。この画面の、黄色いのがロシアの戦闘機の飛んだ跡です。赤いのが中国の戦闘機の飛んだ跡です。向こうは分かっているんですね。ここは日本の領土だということを、だから全部すれすれを通っているんですね。例えば、福岡の対馬ですけど、その間にちょっとした領空の空白があるんですけど、そこの間を飛んでくるんですね。だからロシアも中国も日本の領海領空はどこまでだと理解しているんです。やっぱりそこの中に入らない範囲でぎりぎりのところをこうやって飛んでいるんですね。入るぞと見せかけて日本がどのくらい反応してくるんだというのを日々見ているというのが実態です。
先ほどからちょっと日本の陸上自衛隊はどのくらいの隊員がいるんですかということで、14万人と言っています。実は陸海空の自衛隊の定数を足すと24万7千人いますが、実態は23万2千人です。充足率は94%ということになっています。先ほどから陸上自衛隊は14万人と言っていますが、実は定員としては即応予備自衛官を加えて15万人分あるんですけども、実態として14万人しかいないというのが実態です。なぜかというのは二つ理由がありまして、人がなかなか陸上自衛隊に入って頂けないというのが一つと、予算の縛りがありますので、隊員にそれぞれお給料を払わなければなりませんので、防衛費の中で当然それは賄いますので、毎年毎年、財務省と話をして、人件費はこのくらいの予算でいきましょうというのを決めています。そうするとだいたいこれくらいしか人は採れないですよねというのが二つ目。予算の側面と募集が厳しいという側面の両面があります。従って、例えば陸上自衛隊ですと、14万人の定員で93%くらいの充足率でやっているというのが今の実態ですね。
ここからは、それぞれの陸海空の自衛隊は日本の国土でどのように配置されているのというところをちょっと見ていきたいと思います。これ陸海空を合わせて書いていますので、ちょっと見づらい図になっていますが。陸上自衛隊は大きく5つに分かれています。北海道、東北、関東甲信越、中部から中国四国まで、あと九州沖縄地区というふうに5つに分けて日本を管理しているというか、それぞれ敵が入ってこないようにやっている。海上自衛隊はというとこれも5つありまして、青森県にあります大湊、京都にあります舞鶴、長崎にあります佐世保、広島の呉、そして神奈川の横須賀、この5つでもってそれぞれの警備をしている。5つで日本海あるいは太平洋側を区分してそれぞれのところを警備しているというふうになっています。そして航空自衛隊は4つに分かれています。千歳を中心とする北部航空方面隊と、百里ですとか小松を中心とする中部航空方面隊と築城とか新田原がありますけれども、西部航空方面隊。そして沖縄にあります南西航空方面隊の4つをもって日本の空を守っているというのが今の実態です。やっぱりそれぞれに特性があります。例えば、これ航空自衛隊がどこにあるかというのを指していますが、航空自衛隊は比較的全国に均等に置いています。しかもちょっと辺境なところに、例えば北海道に地図でいくとこういうところに。私も具体的な名前が出てこないんですけれども、青森ですとか、下北半島の先とか、津軽半島の先とかですね、佐渡島とかいろんなところに航空自衛隊の基地を置いています。これはなぜかと言うと、航空自衛隊の仕事は敵が来るのを空で守りますので、日本の領土のできるだけ一番外に置いてレーダーを見ているんですね。365日レーダーを見ています。敵の飛行機が来たら、F-15が出て行って日本の領土を守っている、領空を守っているというようになっております。従って見て分かるように、九州ですと、九州の外側に置いています。本州でも外側に置いています。こういうふうに置いているんですね。レーダーをずっと365日見て、それを中央に送って中央からF-15飛びなさいというような命令を出しているというのが実態です。
次は海上自衛隊です。やっぱり旧軍の流れを継ぐところがありまして、ある程度固まっているんですね。海上自衛隊は港だけではなくて航空機もたくさん持っています。従って、港+航空基地というのをたくさん持っていましてその分、先ほど航空自衛隊で言ったレーダーというようなものを持っています。トータルだいたい60くらいの基地を持っているというところです。しかもやはり満遍なく海上自衛隊を置かないと海でなんかあったときに、例えば船が沈んだりしたら助けに行かないといけないのでそういう意味では海上自衛隊は満遍なく日本海側も太平洋側も置いているというところです。
陸上自衛隊です。なんと陸上自衛隊は全国に163あるんです。駐屯地が。163個あるんですが、私のいる奈良県には1個もないんです。今そういうところもあって一生懸命頑張っているんですが、見ていただくと満遍なく陸上自衛隊を置いています。やはり旧軍の土地を使うところが多かったり、昔の工場跡地ですね、そういったところを戦後、自衛隊ができるときに払い下げてもらって作っているというところが多いです。ただ旧軍、昔の軍隊の土地は比較的いいところにあるんですね。例えばですけど、新潟に上越市というところがありますけども、上越市はお城の中に駐屯地があります。新潟市の北に新発田市というところがあるんですけれども、そこもお城のど真ん中が駐屯地になっています。古い地方の都市に行きますと、そういう町の中にですね、自衛隊の駐屯地があるところが多いですね。それ以外は、例えば大久保なんかは古い工場の跡地に駐屯地を作りました。航空機を作っていたところの跡地に駐屯地を開設しました。そういうふうにして162個、今、石垣島を入れると163個の駐屯地を作ろうとしています。14万人しかいないので、14万で160いくつを回ると1個の駐屯地に1,000人いないんですね。だから非常にそういう意味では駐屯地の維持は苦しんでいます。北海道には36駐屯地があるんですが、昔ソ連と言われた時代は36個駐屯地があってそれでも少ないと言って作ろうとしていたんですけれどもソ連が崩壊してロシアになった時に、36個は多すぎるから20個ぐらいにしようということで中央の方では話をしていたらしいんですが、いまでも36個の駐屯地、分屯地があります。
ここからは陸上自衛隊はどうなっているのというところをご紹介させて頂きます。先ほど駐屯地が163あると言いましたが、それを5個の方面隊というもので区分して持っています。方面隊は方面総監、なかなか総監と名前がつく人は国の機関では少ないんですけれども、方面総監と呼ばれる人がトップでおります。全国で5人のトップの人がいると、そういう形になっています。我々軍隊ですから、やっぱり軍隊は一人の指揮官の元に命令を発令する形、ピラミッド型じゃないとやっぱりうまくいかないんですね。一人の指揮官が命令して、その命令に全員が従うというのがやっぱり軍隊の仕組みになっていますので、5個の方面隊というのをもっていて、全国規模で、いざ何かあった時にはこの5個を束ねる人を決めてその人の命令の元に動くというようにしています。5個の方面隊のそれぞれに師団というものがあります。師団というのは一番最初に言いましたが、普通科ですとか野戦特科ですとか、私がいた施設科、通信科、音楽科、需品科、武器科とか、職種と呼んでいますが、全部もっているのは師団と言います。従って師団は何でもできるんですね。師団長がヘリコプターを出せと言えばすぐ飛んでくるし、弾を撃てと言えばすぐ弾を撃つし、というような形になっています。それを陸上自衛隊は15個持っています。だいたい多い師団で7,000人くらい。少ない師団で5,500人くらい隊員がいるのが師団、旅団というのは4,000人くらいですけれどもそういった組織を持っていまして、それを全国に15個持っています。それに都道府県を担任させています。北海道には4つあります。東北には2つあります。関東甲信越には2つあります。中部から中国四国までで4つあります。九州沖縄で3つあります。そういうふうに分けていまして、それぞれこの県はこの師団、旅団長が担当しなさいというように決めています。そして、その与えられた場所に、敵のミサイルが飛んで来たら、そこを守るのも師団長の役目ですし、災害派遣という事態が起こってもその師団長の仕事になっています。この関西の2府4県は、第3師団という管轄になっています。第3師団長という一人のトップの人が2府4県を担任しているということになっています。例えば、中部の三重で愛知とか石川県とか福井県とかは第10師団というところが担任していまして、10師団長という人がトップでいます。中国5県は13旅団長という人が担任していますし、四国4県は14旅団長という人が担任しています。そこへミサイルが飛んできたり、災害が起こったりすると、そこの師団長あるいは旅団長が対応するというようになっています。2府4県を担任する第3師団というものの形ですけれども、部隊をそれぞれ2府4県のいろんなところに置いています。例えば第7普通科連隊、京都の福知山に置いています。第36普通科連隊というのは伊丹に置いています。例えば戦車は滋賀の高島市ですね、第3特科隊は姫路市とかそういうふうにいろんなところに置いて災害派遣とか、いざという時の防衛任務を担任するようにしています。ただ、同じ2府4県にはこの師団とは関係ない部隊があります。以前私がいました、第4施設団ですとか、第8高射特科群とかそういった部隊があります。これはその第3師団の2府4県の中にいる部隊は師団長が指揮していいよというようになっていますので、いざという時にはこの第4施設団とか第8高射特科群というのは第3師団長が指揮をするというように決められています。先ほど説明しました通り、このように2府4県にはいろんな部隊があるなと、ないのは、奈良です。和歌山にはただ御坊市というところに100人くらいの小さな駐屯地があります。150メートル×150メートルくらいの面積、3ヘクタールないですね、3ヘクタール弱の小さな駐屯地があります。このように2府4県にそれぞれに駐屯地がありまして、災害になったらそれぞれ近くの駐屯地が対応するんですよというふうに決められています。大久保は京都の南にありますので、京都府宇治市から奈良県全体を担任しなさいというふうに決められています。ここまで陸海空自衛隊の体制、特に第3師団の体制を説明してきました。
では、どのようなことで自衛隊は災害派遣に行くんでしょうか?説明していきます。なぜかよく分からないですけれども、近ごろ災害が多いですね、地震とか豪雨とか。実は私、昭和61年に防衛大学校というところを卒業したんですけれども、その時に、その時の防衛大学校の教授からですね、クラス担任みたいな教授がいらっしゃるんですけれども、その教授から言われたのは、君たちは海外に行くこともないし、国民から認められることもあんまりないかもしれないけれど、自衛隊生活これから30数年、でも頑張るんだよと言われました。今だによく覚えているんです。けれども、それから10年もしましたらカンボジアPKOとして海外に出ました。また、近ごろここに書いてあるように、いろいろと災害がありますから、もう国民の目に自衛隊の災害派遣が映らない年はないですね、自衛隊ほんとうに活躍していると思います。自衛隊が活躍するということは国民の方に不幸が起こっているということですから、本来なら自衛隊が活躍していないのが一番いいんですけれども。でもほんとに平成の後半になってから、自衛隊が災害派遣をしなくちゃいけないような事態や災害が数多く起こっています。
自衛隊は、軍隊ですから、むやみやたらに災害派遣をしてるわけではありません。ルールというものが決まっています。まず、要請ができるのは誰ですかというと、基本的には都道府県知事ですね、空港を管理する人、あるいは海上保安庁。例えば、第5管区海上保安本部というのがありますけれども、神戸の方に。そういう立場の人しかできません。市町村長はできないんです。都道府県知事ができるようになっています。例えばですけど、トヨタの工場が燃えています、日産の工場が燃えていますと言っても自衛隊は行くことはないんです。それが飛び火して一般の方の住宅に火が移れば、もしかしたら出動するかもしれません。でも日産の工場が燃えているからといって行くことはないんです。それは災害派遣のルールで取り決めておりまして、3つあります。①公共性があるか、②緊急性があるか、③非代替性があるかということです。やっぱり公共性というのが大事なんですね。そうしないと、誰か大地主の山が燃えてるからその大地主のためにと言われても行けないんです。山が燃えてるもう手が付けられない、しかも民家まで影響を受けるかもしれない。そうすると陸上自衛隊のヘリが飛んで行くんです。やっぱりヘリじゃないと山火事なんかはなかなか消せないですからね。やっぱり公共性がないとダメなんです。また、緊急性がないとダメなんです。もう、自衛隊が来て、すぐにやらないとだめですよと。結構よくあるのが、北海道にいるとですね、山菜を採りに行ったおばあちゃんが行方不明になったので自衛隊をお願いしますというのがあるんです。これは実は災害派遣を行っているんです。災害派遣として出動しているんです。これは国民の生命と財産を守るという建つけで緊急な事態だと。おばあちゃんが北海道で一晩越したら、冬の北海道を一晩越しちゃうともう命に関わるかもしれないので緊急性があると。しかもいっぺんに大人数を出せるのは自衛隊しかいないという非代替性というところで出動しているんですね。なので、北海道では自衛隊は行方不明者捜索によく出動しています。例えば、鳥インフルエンザでいろんなところへ出動したり、豚熱で出動したりしていますが、奈良県でもある養鶏場とかに出動したりしましたけれども、その養鶏場のために行っている訳ではなくて、そこで出た鳥インフルエンザが隣に飛び火するのを防ぐために行っているんです。鳥インフルだとすぐに鶏を殺さないとどんどんどんどん広がるでしょうと。そういったことから3つの要件を満たすので出動しています。なかなかそのへんの解釈はちょっと難しいところもあるんですけどね。
それでいろんな災害があるとよく迷彩服の人たちがテレビで映ったりします。なんであんなに早くに出ることができるのという質問を伺ったことがあります。自衛隊、陸海空自衛隊そうですけれども、例えば航空自衛隊ですと、いつ飛行機が落ちるか分からないわけですね。海上自衛隊だといつ船が転覆するかわからない。ということがあります。当然365日そういったことが発生しても対処できるように警戒態勢をとっています。当然、陸上自衛隊も駐屯地と呼ばれるところにはだいたい小さいところでも10人、大きな駐屯地ですと30人から40人の体制を365日取っています。その人たちは当然今日あなた当番ですよと言われたら、その当番の人はお酒も飲みませんし、いつでも出動できるようにしています。それがだいたい30人から40人くらい。大久保駐屯地ですとだいたい30人ぐらいの体制をとっています。小さな駐屯地があります。先ほど言った100人くらいの駐屯地ですと10人以下7,8人というとこもありますが、通常は30人くらいで体制をとっている。いざ大雨で出動する。例えば、私が行った紀伊半島大水害の時には災害派遣お願いしますと奈良県から言われたのが夜中の1時ぐらいです。その後、体制を取っていた30人は2時には出発しているわけです。お酒も飲まないで待機していますし、雨が降っているから出る可能性はあるかなと思って過ごしています。紀伊半島大水害の際には、大久保駐屯地から出発して明け方のだいたい7時くらいに五條市の災害現場に着きました。体制をとっているのでさっと出られるんですね、自衛隊は。災害の規模を考えると、当然30人だけでは足りませんので大久保駐屯地全員に出動がかかって出勤してきます。そうすると先ほども、ちょっと説明しましたように準備命令を発令します。こんな準備しろと。例えば、今から十津川に行くぞと1週間の準備をしろと言うとそれまで訓練されていますので、100人が1週間行くと一日300食、食べますから、1週間分だと2,100食、食べるわけですね。10日間準備しろ、1週間準備しろと言っただけで活動する際のそれぞれの所掌がありますので、そういう人たちは、例えば燃料はドラム缶10本なのか、20本なのかを自分たちで見積もって積み始めますし、食事を準備する部署の人は100人で1週間ですか、うんと言ったらもう勝手に準備を始めます。何を持っていきますかと言ったら、道路を啓開するための油圧ショベルとバケットとドーザー1台くらい持っていくかと、それでもう勝手に積み始めます。そういうような訓練を行ってきていますので、素早く対応ができます。先ほど言いました30人分はいつも車に食料や燃料、当面必要な機材など3日分積んでいるんですよ。9食×30人分、車にいつも積んでいるんです。行けと言われたらもう車に飛び乗って行くだけなんです。従って最初に行って、例えばですね、大型車はここに入れますとか、あるいは市町村からどこどこの学校を借りましたとか、だから学校を目標として来るようにしてくださいと。そういったことをこの先に出動した部隊が調整して決めます。そしてそこを目指してみんなが出発していくというようになっています。現地で活動すると、当然1週間すれば隊員も疲れますので交代が必要ですね。そこは先ほど言いました師団長が交代の計画をして7日ぐらいたったら、はい次に交代ですと言って交代の人と入れ替わります。例えば、福知山の人が活動していたら、次は伊丹の人が行きなさいとなって、伊丹の人が入っていく。だから迷彩服を着ていると誰が誰だかわかりませんが、逐次交代しながらやっていくというのが災害派遣の実態です。自衛官ですから、長い期間できるでしょうと言われても我々も限界がありますから、1か月も2か月もずっといるというわけにはなかなかいかないので。テレビではみんな迷彩服を着ていることから交代したのは気づかないですけれども、そのように定期的に交代しています。
ここからは、私は、本日、奈良県の職員の立場で講演をさせていただいていますので、奈良県の防災ということで、今、五條市で整備を進めている奈良県大規模広域防災拠点について説明させていただきます。目指しているのは、奈良県内ばかりではなく紀伊半島全体の防災拠点となる奈良県大規模広域防災拠点の整備を今進めているところです。自衛隊とか消防とか警察とかの機関が紀伊半島大水害並みの災害が起こった時に使える一定程度の面積がある土地っていうのが少ないんですね、紀伊半島には。従って災害救助に携わる消防、警察、自衛隊が集まれるような場所を作りましょうというのが目的です。近年発生が近いと言われている南海トラフ地震、特に三重、和歌山が危ないと言われています。東日本大震災みたいな地震が起こると当然ですけど、紀伊半島沿岸部もだいぶやられるというのが大方の予想です。実は、南海トラフ地震が起こると和歌山県は、見積もりによると死者8万人と言われています。また、負傷者は4万人と言われています。死者8万人で負傷者4万人っておかしいじゃないの、行政の見積もりはそうなんです。南海トラフ地震は30年以内に8割の確率で起こると言われています。国はですね、「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」というものを作っておりまして、その中で当然静岡からずっと宮崎県まで南海トラフ地震が起こると大きな被害を受けますので、大規模な防災拠点、例えば物資をそこに集めたり、全消防、警察、自衛隊がそこに集まったりという場所を決めています。静岡空港、名古屋飛行場、名古屋港、そして熊本空港、大分スポーツ公園という五か所を決めています。五か所決めていますが、肝心の四国とか紀伊半島は決めてないですね。決めてないというか、ないんですね、大規模な防災拠点が。従ってこのちょうど紀伊半島の真ん中にある五條市に大規模な広域防災拠点を作りたいなということで整備に取り組んでいます。太平洋側に大きな防災拠点、そこに行けば物もある、ヘリコプターも停まれる、警察も自衛隊も集まれる土地もあるという場所ができるというような構想です。
奈良県としては五條市に大規模防災拠点というのを作ろうと整備を進めています。当然、五條市はここですから紀伊半島のだいたい真ん中ですね。今、京奈和道ができまして、あと紀伊半島アンカールートと言って168,169号を今一生懸命海岸線の方へ整備を進めつつ延ばしているところです。五條市はちょうどそこの起点になるような場所です。奈良県は京奈和自動車道沿いに病院もありますので、その病院を利用していただけたらなということで、五條市というところで、一生懸命作ろうとしています。具体的にはどこに作るのというところですけど、お分かりの方、この黄緑は京奈和自動車道です。24号線がこちらの方、紀の川市のところの手前の、五條西インターのところに上野公園というのがあります。大きな体育館と運動場と野球場、そういったところがあります。その南側にプレディアゴルフ場というのがありまして、そこを計画地として整備できないかという話をしています。多分この中にはお世話になった方もいらっしゃると思うんですが、そうするとこのゴルフ場全部を買い取って、そこに防災拠点を整備しようとしています。なかなか息の長い話でして、最終的にはこういう2,000メートルの滑走路を造りたいなと思っていまして、2,000メートルあると大多数の航空機がここに着陸できますので、万一、南海トラフ地震が起こっても多くの方の命を救えるんじゃないかと思っています。ただゴルフ場はちょっと山の中にありますのでバイパスを造るよう計画しています。南海トラフ地震はいつ起こるか分かりませんので、とりあえずゴルフ場の中を5ヘクタールくらいの平場を造って、いつ地震が起こってもいいですよという態勢をとりあえず取っておいて、それから周りの造成を進めていけたらなと思っています。山と平野部の中腹にあるんですね、プレディアゴルフ場というところは。従って、ちょっと盛り土しないといけないです。土地全体が斜めですから。土盛り用の土が必要となります。この土はリニア新幹線の掘削土を利用できないかと考えています。リニアが奈良を通れば当然、三重から来る。そして大阪に抜けて行きますから、ほとんど奈良県内はトンネルになるんですね。新大阪の高さと奈良の高さは全然違いますから。トンネルにしないと勾配が付きすぎてリニアが走られませんので、そうするとトンネルを掘らないといけない。トンネルを掘れば当然土が出てくる。そうするとこのプレディアの片勾配のところの土地を真っすぐにできるんじゃないかと。そうしますと、最終的には、この滑走路を東側に延ばしてかつ西側にも延ばして最終的には2,000メートルの滑走路を造りたいなと思っているところです。
終わりに、最後はもう実は自衛官を終わったのでこういうお願いをするのもおかしいのですけれども、先ほど言いました通り、陸上自衛隊の定員は15万人ですが、14万人しかおりません。なかなか募集が厳しいということもありまして。是非とも、何かいい情報がありましたら、身近な方に自衛隊いいねという方がおられましたら、私にご一報いただくと自衛隊に繋ぎますので是非ともお願いしたいなと思います。陸海空ありますけれども、陸海空、当然、活動する場所が違いますので、航空自衛隊は空ですし、海上自衛隊は海ですし、陸上自衛隊は日本の陸の上でやりますのでいわゆる別会社なんです。ただ、別会社なんですが、別会社であるがゆえに自衛隊に入ると好きな、いろんな職というか、あります。車の整備の好きな人もおりますし、音楽が先ほども言いましたが、好きな人もおりますし、ありとあらゆる職がありますので是非ともご興味がある関係の方がいらっしゃいましたらご一報いただければありがたいなと思っています。
いろいろと1時間半にわたっていろいろなことをしゃべらせていただきました。自衛隊というのはいろんなところで活動しておりますが、その基礎的な知識を分かっていただければと思います。あと、もう一つ分かっていただきたいのは、やっぱり国際情勢が厳しいんだなと、例えば同じ島国でもイギリスの隣が、海岸を挟んだ隣がフランスですから、でも悲しいかな日本の、日本海を挟んだ向こうは北朝鮮ですし、ロシアですし、中国ですね。その違いが大きいんです。従って防衛費についていろんな声がありますが、そのあたりを解かっていただきますと防衛費をもうちょっと上げてもいいのかなというのも解かっていただけるかなと思います。やっぱりヨーロッパの環境とですね、この日本周辺の環境はやっぱり違いますね。ロシアも、中国も、北朝鮮も核兵器を持っています。100万人近い軍隊をそれぞれの国が持っているというのと、一方、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ。10万人以下の軍隊しかいないですけれども、それは彼らは彼らで相互に信頼があるからですね。やっぱり、そういう国際情勢をご理解いただいて陸海空自衛隊の存在意義を分かっていただければなと思います。
1時間半にわたってありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。