令和2年度 近畿支部事業報告
令和2年度近畿支部の事業計画に基づき実施した主な事業は次のとおりですが、新型コロナ感染症拡大に対する2回の緊急事態宣言や、宣言解除時であっても継続的な感染症予防対策の実施が求められる状況であったため、実施内容や回数が例年に比べて大きく変更・減少した事業があります。
1.会員資質と専門的知識、技術力の向上を図るための講演会、研修会、講習会の開催について
令和2年度は、会員資質と専門的知識、技術力の向上を図る目的で講演会、研修会、講習会の開催を目指しましたが、集合形式の開催には多くの厳しい条件が伴ったため、中止あるいはオンラインでの開催を検討・実施しました。
< 講 演 会 >
例年、総会開催日に講演会を開催していましたが、令和2年度は講演会を中止しました。
< 研 修 会 >
研修会場に集合して開催する方法では開催できなかったため、オンラインによる研修を 実施しましたが、年度末に実務研修会を独禁法講習会と合同で開催した1回のみとなりました。
研修会の開催要領及び受講者は次のとおりです。
① 実務研修会
日 時 : 令和3年2月17日(水)
会 場 : オンライン形式
テーマ : 「土地収用法及び事業認定手続」
講 師 : 平和ITC(株)
調査役 加藤 巖 氏
受講者 : 22会員 35名、非会員3社3名 合計38名
< 講 習 会 >
講習会は、オンラインにより「独占禁止法」に関する講習会を実務研修会と合同で開催しました。例年実施していた、近畿支部の「標準補償算定システム」の操作実技に関する講習会、及び近畿支部補償業務委員会と近畿地方整備局用地部の補償業務技術に関する合同の研究会「用地補償技術研究会」において取りまとめた報告書の説明会は、開催できませんでした(用地補償技術研究会の平成2年度報告書は「近畿支部報75号」に掲載)。
実施した講習会の開催要領及び受講者は次のとおりです。
① 独占禁止法講習会
日 時 : 令和3年2月17日(水)
会 場 : オンライン形式
講 師 : 公正取引委員会事務総局 近畿中国四国事務所
経済取引指導官 石本 将之 氏
受講者 : 22会員 34名、非会員3社3名 合計37名
2.起業者主催の研修会等への講師の派遣
昨年度に引き続き、起業者からの依頼に基づき研修会に補償コンサルタント協会近畿支部の会員を講師として派遣いたしましたが、起業者の研修会の開催も少なく1件の研修会に派遣したのみとなりました。
(令和2年度に近畿支部が講師派遣した研修会等)
①近畿地区用対連用地事務職員(専門研修) 2会員
3.優秀な人材を育成し確保するための方策の実施について
1)専門学校に対する「補償講座」の実施
用地補償業務としての優秀な人材を育成し確保するため、令和2年度も学校法人創真総合技術学園近畿測量専門学校の「夏期補償講座」に7名の講師を派遣し、(一社)日本補償コンサルタント協会発行の「補償業務概説(改訂19版)」をもとに講義を実施しました。
2)専門学校等へのPR活動の実施
優秀な人材を確保するための令和2年度の活動として、高校、専門学校、大学などに対する人材確保のための(一社)日本補償コンサルタント協会のPR活動を順次展開するとしていましたが、コロナ禍のため準備・調整が整わず実施することができませんでした。
4.補償相談等への対応について
会員や会員以外又は起業者からのメールや電話による単価表やその他補償に関する質問・相談等に対し、近畿地区用対連に問い合わせるなどスムーズな対応に心がけました。 主な相談等は次のとおりです。
・損失補償基準の取扱いについて 1件
・近畿地区用地対策連絡協議会標準書の取扱い・内容について 4件
・補償コンサルタント業務の発注方法や業務内容について 2件
・償業務管理士の業務範囲について 1件
上記以外に、今年度の登録更新講習から受講にあたってCPDポイントが必要になるため、それに関する質問が数件ありました。
また、コロナ禍により補償業務管理士検定試験の実施時期が変更されたことから、それに関する質問も数件ありました。
5.補償業務に必要な関係図書の斡旋について
用地補償業務を実施する際に参考となる図書類等の斡旋については、本部から会員に案内されていますが、支部からも必要に応じて会員専用ホームページを活用し、会員に情報提供しました。
6.補償コンサルタント協会会員の業務受注の拡大について
1)行政機関等への「要望書」の提出及び意見交換会の実施
令和2年度の陳情・要望活動は、昨年度に引き続き、3要望7項目の「本部要望書」と、近畿支部の各会員から提出された要望事項11項目をまとめた「令和2年度近畿支部版要望書」をもとに、令和2年9月29日の近畿地方整備局用地部に対する要望活動を皮切りに、各府県や政令指定都市など14の起業者に対して要望活動を行いましたが、コロナ禍のため起業者と対面して要望を伝え意見交換を行うことができたのは7起業者となり、あとの7起業者には要望書を郵送等で届けるのみとなりました。
《 本部要望書 》
1. 補償コンサルタント業務に従事する技術者の育成、人材確保、業務環境の整備について
(1)企業の健全な発展と技術者の処遇改善
①安定的な事業量の確保
②地域コンサルタントの活用の拡大
③発注歩掛の継続的見直し
④技術者単価と低入札価格調査基準価格の更なる引き上げ
(2)魅力ある業務環境の改善
①入札時の補償業務管理士の資格に対する企業評価、技術者評価の
ウエイトの拡大
②適正工期、納期の平準化、長時間労働の是正、有給休暇等取得を
はじめとする働き方改革の推進に対する発注者側の理解と配慮
2.品質の確保と品質の向上について
(1)発注仕様と歩掛の統一的整備
(2)適正な技術者評価を行うための的確な発注方式の採用
(3)受発注者相互のミス防止の取り組み強化
(4)補償コンサルタント業務における補償コンサルタントCPDの活用
3.協会会員の一層の活用について
《 近畿支部要望書 》
1.用地調査業務の業務内容、業務指示及び業務数量の適正な変更について
2.補償金算定等に関する運用及び様式の統一について
3.機械設備及びプレハブ建物の調査算定と見積徴収について
4.アスベスト含有建物等の調査及び算定について
5.収用等の課税の特例制度の運用について
6.地盤変動影響調査業務について
7.近畿支部標準補償算定システムの採用について
8.一般社団法人日本補償コンサルタント協会近畿支部との
「所管施設の災害応急対策業務に関する協定」について
9.所有者不明土地問題の対策に補償コンサルタントの活用を
10.ウィークリー・スタンスへのご理解とご協力について
11.新型コロナ禍における業務対応について
近畿地方整備局に対する要望活動には、コロナ禍ではありましたが、互いに感染拡大予防対策を徹底し、近畿支部より中村支部長、武田副支部長、梶副支部長の支部三役ら支部役員4名が、近畿地方整備局の伊藤用地部長はじめとする用地部幹部の方々に対し、本部要望書、近畿支部版要望書をもとに会員からの声について具体的事例を挙げるなどして実態の改善を要望いたしました。
特に、我々補償コンサルタント協会の会員が品質の高い成果物を責任持って納入するために、また、各会員企業が継続的に人材を確保していくために、さらに、政府が政策として進める「働き方改革」を実行していくためには、適正な契約変更や積算歩掛の適用、そして各起業者の補償金算定等に関する運用及び様式の統一が必要不可欠であるとして強く訴えました。
そして、今回は新規の要望項目を2つ追加しており、そのひとつである「収用等の課税の特例制度の運用について」では、関連書類の作成を補償コンサルタントに依頼された場合は作業量の増加が見込まれるため、適正な委託費の追加を要望しました。もうひとつの「新型コロナ禍における業務対応について」では、起業者、権利者、受注者いずれもが安全な体制の下、安心して現地調査が行われ、円滑に成果物が納品できるよう、十分な工期設定や工期延長などの特段の配慮を要望しました。
近畿地方整備局からは、近畿支部版の要望書について、それぞれの要望事項に対する回答をいただき、「業務契約において発注者と受注者は対等な関係であり、あたかも発注者が優越的地位を有するかのようなふるまいは許されません。業務内容に変更が生じた場合は、受注者と協議の上、業務内容に応じた契約変更、委託料の変更(請負契約書第19条)を行うよう指導しており、引き続き適切な発注に努めて参ります。」として理解を示されました。さらに、補償金算定等に関する運用及び様式の統一に関する要望についても、「起業者によって補償金算定方法の平仄が図られるよう、近畿地区用地対策連絡協議会の活用などにより、起業者間の連携に努めて参ります。」とご理解を示されました。
意見交換においては、われわれの業界の多くが中小企業であり、継続的な技術者の育成と優秀な人材の確保などを行っていくためには補償コンサルタントの業務量の確保が重要であり、公共事業予算の安定的な確保をお願いしました。
また、人材確保の課題や業務のさらなる合理化・迅速化の具体的方策等、起業者も含めた今後の用地取得業務のあり方についても、活発な意見交換が行われました。
各府県や政令市などの起業者の皆様に対しましては、特に、依然として会員から改善要望の絶えない、適正な契約変更や適正な歩掛かりによる発注、プレハブ建物等の見積徴収依頼に対する起業者の配慮等に関する問題について、近畿支部版要望書をもとに近畿支部の役員が現場実態と具体的事例をあげて改善を要望いたしました。
一部の起業者におかれましては、要望に該当しない項目や既に改善や対策済みの項目等もありましたが、要望書の趣旨や実情等については概ねご理解を頂きました。特に、収用等の課税の特例制度の運用に関しては、「我々(起業者)も対応を思案しているところ。用対連による統一的な方向性の提示を期待している。」と近畿地区用地対策連絡協議会における早期の調整の必要性を述べられました。
2)近畿地方整備局「用地補償技術研究会」への参画
用地調査業務を現場で統括する補償コンサルタントと近畿地方整備局との技術交流と意見交換の場として平成27年度に開設した「用地補償技術研究会」に令和2年度も補償業務委員会の委員が近畿支部を代表して積極的に参画し意見を述べました。
令和2年度は、次の3つのテーマ、
①「石綿含有建材の撤去費用の統一」について
②「公共事業用資産の買取り等の証明書の作成に伴う事業施行地外の土地に
存する物件の移転補償金の分割記載」について
③「プレハブ住宅の検討」及び「建物移転工法の検討における曳家工法の取扱」
について
の検討を行うべく「用地補償技術研究会」を開催しましたが、新型コロナ感染 症拡大予防対策としてメンバーが全員参加する研究会は1回の開催にとどめ、 テーマごとに班別会議を開催して検討作業を進めました。そのため、令和2年 度は報告書の取りまとめまでには至らず、令和3年度を目途に取りまとめるこ ととしました。
《第15回用地補償技術研究会》
日 時 : 令和 2年 7月21日(火)
テーマ :①令和2年度研究テーマの決定について
②「検討班所属分け」及び「班長・副班長の選出」について
③その他
3)「近畿地方所有者不明土地連携協議会」への協力団体としての参画
平成30年6月13日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「所有者不明法」という。)」が公布され、近畿地方整備局では平成31年2月1日に管内法務局、府県、政令市等の行政機関と用地業務等に関係する協力団体による「近畿地方所有者不明土地連携協議会」を設立しました。
令和2年6月8日の第2回通常総会において令和2年度活動計画が決定されましたので、本協議会の構成員である我々近畿支部も積極的に活動参加する予定でしたが、コロナ禍により協議会の活動自体が制限を受けたため支部としても取り立てた活動は行えませんでした。
7.「近畿支部補償標準算定システム」の普及拡大等について
近畿支部が独自に開発した「近畿支部標準補償算定システム」の普及拡大につきましては、導入会員はもとより未導入会員や非会員にも参加を呼びかけ「木造建物CAD部入力及び推定再建築費算定技術講習」をテーマとしたシステム操作技術講習会を開催する予定でしたが、コロナ禍により令和2年度内は開催できなかったため、今年度のWebによる開催の方策を検討しました。なお、例年行っている要望活動や意見交換会を通じて、また近畿支部報においてシステムの紹介をするなどでは普及拡大に努めました。
8.補償コンサルタント業務の広報・宣伝について
1)支部報による広報活動の実施
令和2年度の広報活動は、「近畿支部報」の第74号及び第75号を発行して会員に配布するとともに、178の起業関係者(国:76、府県:46、市町:31、その他の公共事業者:25)に対して配布し、近畿支部の活動状況や会員情報のPR等を行いました。
2)会員情報の提供と宣伝等
企業者等への会員情報の提供と宣伝を目的に、会員名簿(令和2年5月末日現在)を作成し、会員及び起業者に配布するとともに、要望活動や意見交換の場で配布するなどあらゆる機会を通じて会員の積極的な活用を訴えました。
また、支部の「ホームページ」や「近畿支部報」に最新の会員情報を掲載し、起業者に対して会員情報のPRに努めました。
9.補償コンサルタント業務に関する情報共有及び情報交換について
支部機関誌「近畿支部報」による情報共有だけでなく、(一社)日本補償コンサルタント協会近畿支部の会員専用ホームページや会員専用メールを活用し、協会本部や近畿支部の活動内容及び補償業務に係る諸情報を会員に対してタイムリーに情報提供するよう努めました。
10.「補償標準単価表」の会員への貸与について
補償業務の円滑な執行に寄与するため、近畿地区用対連から令和2年度版の「基準・要領編」「建物工作物編」「立木編」「通常損失補償編」「工損標準単価表」の単価表、歩掛書及び「近畿地区用対連運用申し合わせ」の貸与を受け、CDに編纂して貸与を希望される会員及び非会員に貸与しました。
また、兵庫県用対連からも令和2年度版「補償標準単価表」(兵庫県版)の一括貸与を受けて必要とする会員に貸与しました。
11.大規模災害の被災地等の復旧・復興への支援について
東日本大震災や熊本地震、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震等災害等の復旧復興関連業務については、「(一社)日本補償コンサルタント復興支援協会(以下、「復興支援協会」という。)が受注し、業務実施会員募集案内や参加希望の取り纏めなどの連絡調整等の業務については復興支援協会と協会本部との協議をもとに協会本部からの指示により実施することとなっています。
令和2年度は、近畿支部に対する指示が無く連絡調整業務は実施しませんでした。
12.会員親睦事業の実施について
会員相互の親睦や交流によって組織の連携強化を図ることを目的とした同好会等の会員親睦事業につきましては、新型コロナ感染症予防対策を徹底しながら、以下の行事を実施しましたが、例年6月頃に開催している魚(いさき)釣り大会は中止しました。
① 第66回 JCC親睦互留歩大会
日 時 : 令和2年3月31日(令和2年度行事として実施)
場 所 : 兵庫県三木市 チェリーヒルズG.C
参加者 : 12会員 15名
② 魚(イカ)釣り大会(第8回)
日 時 : 令和2年8月22日
場 所 : 兵庫県香美町
参加者 : 6会員 10名
③ 第67回 JCC親睦互留歩大会
日 時 : 令和2年10月15日
場 所 : 兵庫県西脇市 西脇カントリークラブ
参加者 : 17会員 21名
④ 秋のハイキング
日 時 : 令和2年11月14日
場 所 : 「比叡山延暦寺と大原三千院」(兵庫県)
参加者 : 10会員 32名
13.「新春交礼会」の開催
例年、新しい年の門出を祝い、会員相互の親睦と交流を深めることを目的に「新春交礼会」を開催いたしておりましたが、令和3年年明けの「新春交礼会」はコロナ禍により開催できませんでした。
14.海外用地補償制度等の調査研究及び視察について
協会本部が実施する、海外の用地補償制度等の調査研究及び視察については、例年、支部会員からの参加者に対し助成金を支出していますが、令和2年度はコロナ禍により視察が中止となったため参加者はいませんでした。
15.役員会及び委員会の活動状況
令和2年度の役員会及び委員会による支部活動状況は次のとおりです。
(1)役員会 9回(うちWeb開催6回)
(2)委員会
総務委員会 | 1回 |
研修委員会 | 1回(うちWeb開催1回) |
補償業務委員会 | 3回(うちWeb開催1回) |
補償業務委員会班長会議 | 6回(うちWeb開催1回) |
補償システムIT委員会 | 2回(うちWeb開催2回) |
企画・広報委員会 | 4回(うちWeb開催3回) |
親睦委員会 | 1回 |
計 | 12回(うちWeb開催7回) |
16.協会本部委員会等への参加
協会本部の各委員会等に担当役員が委員として出席し、それぞれの本部委員会のテーマに関する近畿支部の意見、考え方を反映しました。
令和2年度の本部委員会の状況は次のとおりです(全てWeb開催)
(1)本部 総務委員会 3回
(2)本部 企画・広報委員会 3回
(3)本部 補償業務委員会 4回
・ 固定資産家屋評価補助業務受託分科会 2回
(4)本部 研修委員会 3回
17.会員の現況及び「補償コンサルタント登録」の状況
令和 3年 4月 1日現在
正 会 員 数 92社
賛助会員数 1社
合計 93社 です。
令和2年度新規入会員は4、資格喪失会員0、退会会員が2